研究概要 |
がん転移機構において、炎症性サイトカインTNF-αが重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。我々はin vitro TNF-α刺激モデルを確立し、結腸がんcolon 26細胞をin vitroにてTNF-α刺激することにより、浸潤、遊走および肺転移能が誘導されることを明らかにするとともに、このTNF-α誘導性の転移能の増加には、ERK MAPK経路、またはTAK1を介するストレス応答シグナルが重要な役割を果たしていることを報告してきた。そこで、抗がん、抗転移作用が報告されている人参に注目し、このTNF-α誘導性の転移能の亢進における人参サポニン成分の効果について検討した。まず、人参のサポニン分画からginsenoside Rb1,Rb2,Rg1などを分離した。また、人参のサポニン分画を腸内細菌に代謝させ、人参の主な代謝物M1(20-O-β-D-glucopyranosyl-20(S)-protopanaxadiol)を分離した。Colon 26細胞をTNF-α刺激する前に人参サポニン成分及び代謝物M1を処理し、転移関連遺伝子の変化をRT-PCR法を用いて検討した結果、TNF-α誘導性のMMP-9、u-PAなどの細胞外害器質分解酵素の発現が、ほかの人参サポニン成分よりM1によって最も強く抑制された。人参サポニン成分及び代謝物による毒性はなかった。以上の結果より人参を服用することにより生体内で代謝されるM1によって、炎症性転移の抑制が期待される。
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