Cu-ATSMの腫瘍における低酸素組織選択性は、申請者が属する大学において見出されたものであり、臨床における評価においても先端的成果をあげている。本研究では、種々の実験腫瘍系における組織学的検討とCu-ATSM、FDG集積との対比を詳細に行うことにより、現在多施設で進展しつつある臨床検討の解釈の基盤を提供することを目指した。 今回の研究では、系統が違う4種類の担癌マウスにCu-ATSM・FDGを投与し摘出した腫瘍の局所内集積を検討した。また腫瘍結節の染色用切片を作製し、HE染色をはじめとする一般染色ならびに腫瘍微細血管、増殖細胞またアポトーシス細胞の免疫組織染色等を行う技術を確立し、これを用いてCU-ATSM・FDG集積部位と組織学・細胞生物学的所見との対比検討を行った。 今回使用したすべての腫瘍において、Cu-ATSM集積部位は腫瘍細胞を豊富に認めるが低酸素状態でほとんどの腫瘍細胞は細胞増殖を停止していた。それに対しFDG集積部位は、血管が豊富で細胞増殖も活発であることが分かった。 これらのことより、Cu-ATSMは腫瘍内の低酸素でかつ細胞分裂を停止している部位に特異的に取り込まれることが示された。このような部位は腫瘍組織内で特に癌治療に抵抗性を有する場所であるため、Cu-ATSMの臨床応用を行うことにより癌治療への有用な情報を提供できるものと考えられる。
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