2脚歩行ロボットは多リンク系から構成される、多くの自由度を持った複雑な機械システムである。本研究では、このロボットの力学モデルを導出し、非線形振動子を用いて歩行制御系を設計した。 一般にロボットの関節にはモータが取り付けられているため各関節は直接制御できる。しかしながら、脚先は単に地面と接しているだけであり、アクチュエータを持たないため、全体の姿勢運動に関しては直接制御することができない。これまでの研究では、基本的に逆運動学や逆動力学に基づいて全ての関節角を計算するフィードフォワード制御が用いられていた。そのため、環境の変化や外乱に対する適応性が得られず、容易に不安定化した。そこで、本研究では歩行制御系を次のような運動制御系と運動計画系から構成した。運動制御系は各関節に取り付けられたモータとモータ制御系から構成され、局所PDフィードバック制御を用いて各関節を制御する。運動計画系はそれぞれが安定なリミットサイクルを持つ非線形振動子系から構成され、振動子は相互作用によって互いに作用し合い、位相パターンを形成する。そして、その振動子系の位相から各関節への写像を用いて各関節の運動を構成する。更に、姿勢情報として、脚先に取り付けられた接地センサからのシグナルを脚が接地した瞬間に運動計画系にフィードバックさせる。その結果、環境の変化や外乱による姿勢運動の変化に従って位相パターンが変化され、姿勢運動の安定性が増加される。この提案する歩行制御系を用い、運動解析を行った結果、歩行速度の変化や歩行面の傾斜角度の変化といった環境の変化に対して、自律的に歩行周期が変化することによって、より安定な、適応的な歩行が実現されることがわかった。更に、2脚歩行ロボットのハードウェアを用いて実験を行い、本制御系の有効性を検証した。
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