本研究では廃棄物の安全性評価の方法を、特に重金属類を対象として提示した。 毒性発現を評価の最終目標とした場合に廃棄物の安全性評価のために必要な4ステージを提案し、ヒトを対象として事例解析を行った。第0ステージとして含有量試験を位置づけ、第1ステージの溶出・浸出には環境庁告示13号法溶出試験、第2ステージの曝露経路にはbioavailability予測試験、第3ステージのアベイラビリティーには小腸上皮モデルであるCaco-2細胞を用いた輸送試験を位置づけた。最後の第4ステージの生物反応・応答はDNAマイクロアレイを適用して評価した。第4ステージでは対象を重金属類だけでなく、多環芳香族炭化水素類にひろげた。さらにDNAマイクロアレイデータの確認を行うことと、多環芳香族炭化水素類とEROD活性とCYP1A遺伝子発現のメカニズムの解明を目的として、CYP1A1、CYP1A2を目的遺伝子として定量的RT-PCRを行った。その結果、ホウ素はバイオマス系試料に多く含まれ、含有量に匹敵する量が胃腸管内にて溶出し、吸収されることが示され、免疫系に機能障害を引き起こすと考えられた。鉛は灰に多く含まれ、胃腸管において高濃度に溶出するが、吸収はほとんどされないことが示され、遺伝子発現から低濃度でも潜在的な毒性を有していることが示された。亜鉛は胃腸管において溶出し吸収されるが、その毒性は低いことが示された。また、多環芳香族炭化水素類によるEROD活性とCYP1A遺伝子の関係が示された。
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