研究概要 |
日本学術振興会特別研究員としての平成15年度から平成16年度にかけての研究期間の中で、アメリカ・ドイツにおける企業・資本市場法制の研究を通して、企業・資本市場法制における株主・投資家像の分析を行い、その具体的な研究成果を論文の形で公表することを計画しています。平成15年度においては、アメリカ証券取引委員会(U.S.Securities and Exchange Commission)が2003年に制定した、議決権行使情報の開示を投資顧問業者に義務づける新規則(Release No.33-8188,Release No.IA-2106)の研究を行いました。アメリカの証券規制当局がこの規則を制定した背景には、エンロンやワールドコムなどの大型企業不祥事を受けて、実効性のある経営監督システムを模索するなか、投資顧問業者(の議決権行使)にその一端を担うことを期待したものであると指摘することができます。アメリカのみならず日本を含む世界の先進国は、各国独自の経営監督システムに実効性を付与することに腐心していますが、現実には絶対的なシステムが存在するわけではなく、経営監督につながる種々の法制度を有機的に結合させることの巧拙が問われており、その中で経営監督システムの一端を担うことになる投資顧問業者の議決権行使について、その情報開示を義務づけるアメリカの新規則を手掛かりに、企業・資本市場法制における株主・投資家像の分析を行っています。平成16年度の最終的な研究成果の公表を念頭に、研究課題に継続的に取り組んでいますが、年度途中に特別研究員採用となった平成15年度は、論文作成には研究期間が十分ではなかったことから、研究成果としての論文の年度内の発表は見送りました。
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