膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)は癌、動脈硬化、糖尿病性網膜症、腎症やリュウマチなどの組織で高発現しており、細胞外基質分解を行うことにより、これらの疾患に関与する。特に癌組織において、MT1-MMPは浸潤先進部で発現しており、MT1-MMPの機能阻害は浸潤能を抑制することから、MT1-MMPは癌細胞の浸潤装置を構成する蛋白質因子の一つと考えられている。しかしながら、MT1-MMPが癌細胞の浸潤装置として働く際の制御機構やその標的基質については、十分に明らかになっていない。そこで、本研究では癌細胞よりMT1-MMPの相互作用分子を網羅的に解析することとした。 テトラサイクリン誘導発現系を用いて、FLAG標識したMT1-MMP及びヒトMT1-MMPホモローグMT4-MMPを安定的に発現誘導することが可能なヒト癌細胞株の樹立を行った。樹立した癌細胞株から、抗FLAG抗体担体カラムによってMT1-MMPを含む複合体を単離して、その中に含まれる構成分子をプロテオミクス技術で網羅的な解析を行った。その解析情報より、癌への関与が示唆される細胞表層の分子を中心に解析を進めた。その結果、免疫沈降法でMT1-MMPと両者間の結合を確認し、免疫染色法により、細胞の運動の先進部位でMT1-MMPと共局在することが分かった。さらに、結合分子のいくつかについてはIn vitroアッセイ法でMT1-MMPの基質分子となることが明らかとなった。
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