研究概要 |
現在ゲノム特定領域研究においてメダカのゲノム解析、および初期胚で発現する遺伝子の網羅的単離が進行している。本研究は発現遺伝子群のDNAチップ化と突然変異体における発現プロファイル解析系の確立を目指している。本年度は完成したメダカDNAチップを用いて、メダカ突然変異体headfishの遺伝子発現プロファイルを解析した。headfish変異体は胴尾部を欠失しているが、頭部はほぼ正常に形成されるため、DNAチップを用いて野生型胚と遺伝子発現プロファイルを比較することにより、胴尾部の形成に重要な遺伝子を網羅的に単離できることが期待された。 メダカDNAチップ(メダカマイクロアレイ8000)は、メダカESTプロジェクトで単離・登録されているデータベースから8,000クラスターのESTを選出して作成したものである。すでに野生型胚における遺伝子発現プロファイルを解析し、これまでにin situ hybridization法により解析された遺伝子発現パターンと一致していることを確認している。 headfish変異体は発生初期から中胚葉組織に異常を示し、孵化期には胴尾部の大部分を欠損する。表現型の解析からheadfishでは胴尾部に分化する中胚葉細胞を供給する尾芽の性質が異常になっていることが示唆された。遺伝学的解析により、headfishの原因遺伝子がfibroblast growth factor receptor 1(fgfr1)であることが判明した。DNAチップを用いて解析した結果、fgfr1の下流因子について、正に制御されているもの、負に制御されているもの、それぞれについて数多くの候補遺伝子のデータを得ることができた。その中にはFGFシグナルによって誘導されることが知られているspadetail/tbx16も含まれていた。今後得られたデータをさらに精査することにより、FGFシグナルによって制御される遺伝子の全体像を把握することができると考えている。
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