本研究の目的は、タンパク質の立体構造、形態形成に対する電荷の役割を検討し、形態予測を行うことである。そこで、本年度は、立体構造形成における電荷の役割を検討するため、配列類似性が20%以下の構造類似タンパク質ペア(アナログタンパク質)に対して、独自に考案したアミノ酸配列上の電荷分布を解析できるCharge Density plot (CD plot)を用いたアミノ酸配列の電荷分布パターンの比較を行い、類似した電荷分布を持つアナログタンパク質を抽出し、電荷分布の類似性と構造の類似性との関係について検討することを目標に研究を進めてきた。 研究を進める上で重要となるのが電荷分布パターンの定量的な評価である。そこで、今年度は、電荷分布パターンの定量的な評価による類似した電荷分布パターンを持つタンパク質の抽出に重点を置いて研究を進めた。これまで電荷分布パターンの類似性の評価は、視覚的にはとらえられていたが、定量的な評価というのは困難であった。しかしながら、今年度の研究において、有効な評価式を考案することができ、定量的な電荷分布の比較が可能となった。そこで、アナログタンパク質256ペアについて、この評価式を用い電荷分布パターンの比較を行った結果、類似した電荷分布パターン、または、反転した電荷分布パターンを持つペアを見出すことができた。このような電荷分布の特徴は、立体構造形成における電荷クラスタの重要性を示唆していると考えられる。この内容は、Chem-Bio Informatics Journalにおいて発表した。 このように類似した電荷分布を持つタンパク質の抽出が可能となったので、今後は、類似した電荷分布を持つタンパク質について、電荷を中心に他のアミノ酸配列の物理化学的な性質にも注目し、解析を行い、タンパク質の立体構造、形態形成について探ってく予定である。
|