東京大学医科学研究所の中井謙太教授との共同研究により、1999年より公開されている枯草菌の転写データベースDBTBS(http://dbtbs.hgc.jp/)において、データ更新と転写機構のゲノム間比較機能などの追加を行い、論文として発表した。 DBTBSとは、実験により確認された転写因子や被制御遺伝子、シスエレメント配列などの情報を文献より抽出しまとめたデータベースである。これは国内外の枯草菌研究者のレファレンスとしてだけでなく、バイオインフォマティクスの研究者がシスエレメントの予測や共発現遺伝子群の予測を行う際の正解データとして用いるなど、広く活用されている。今回データの更新を行い、さらに、枯草菌における転写制御メカニズムがどのような真正細菌において保存されているのかが確認できるシステムを構築した。具体的には、まずDBTBSに登録されている枯草菌の転写因子や被制御遺伝子において、他の真正細菌におけるオルソログの有無を確認した。次に、既知のシスエレメントに対しては、転写因子ごとに結合配列の重み行列を作成し、先に求めた被制御遺伝子オルソログの上流配列をサーチすることにより、シスエレメントの保存を調査した。すなわち、転写因子やそれにより制御される遺伝子群といったタンパク質コード領域の配列比較はもちろんのこと、被制御遺伝子の上流非コード領域にも着目し、シスエレメントの保存の確認も行ったところに特色がある。これらの結果はデータベース(DBTBS)から転写因子ごとにアクセスが可能である。その他にも、入力配列に対して候補転写因子結合サイトを返すモチーフ検索機能や、プロモータ領域の図による表示などの機能も追加した。 その結果、12月の分子生物学会においては口頭発表に選ばれ、更新したデータをもとにどのくらいの生物種でシスエレメントが保存されているのかという解析結果を報告した。
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