研究概要 |
今年度はカタユウレイボヤのゲノムにコードされるT-box遺伝子の網羅的解析を行った.公開されたゲノム配列の解析から予測される10のT-box遺伝子について,Ci-Braを除く9つ全ての遺伝子について全長cDNAをクローニングしその配列を決定した.その結果,カタユウレイボヤはTbx4/5を除くTbx1/10,Tbx15/18/22,Tbx2/3,Tbx6,Tbx20,Eomes/Tbr/Tbx21,Brachyuryのサブファミリーに属する遺伝子を一つずつ保持している事が明らかになった.また,Cionaで独自に重複したと考えられる4つのTbx6が見つかった.Ci-Braを除く9の遺伝子についてWISH法によって時間的・空間的発現パターンを明らかにした. 現在は進化的関係,発現パターンなどから最も興味深いと考えられるTbx6サブファミリーについて解析を行っている.Ci-Tbx6a,b,c,dの4つの遺伝子はいずれも32細胞期以降,間充織と筋肉で発現が見られるが,互いに異なる発現パターンを示した.Ci-Tbx6aが間充織でより強い発現を示すのに対し,Ci-Tbx6b,c,dは筋肉で強く発現し,110細胞以降では予定筋肉細胞にのみ発現が見られるようになる.また,Molpholino Oligoによる機能阻害実験からも,Ci-Tbx6bは筋肉形成において必要だが,Ci-Tbx6aはそうではないといった違いが見られている.さらに,DNA microarrayを用いた下流標的遺伝子の探索の結果,Ci-Tbx6aとCi-Tbx6bの機能の違いを反映した結果が得られると同時に,両者により重複して制御している遺伝子も見つかってきた.下流遺伝子とその制御が進化的にどのように変化してきたかより詳細に解析するために現在SELEX法によりコンセンサス配列を解析中である。
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