研究概要 |
研究代表者は本年度に以下の研究を行った。 1.c-Mycが造血幹細胞の増殖・未分化能に及ぼす影響についての解析 4-hydroxytamoxifen(4-HT)によって活性が誘導されるc-Myc/ERTを導入したマウス造血幹細胞は、4-HT非存在下では21日間の培養でほぼ全ての細胞が死滅したのに対し、4HT存在下では21日を越えて増殖を続けた。これらの細胞の培養1ヶ月の時点での表面抗原解析では、Sca1+,c-Kit+の未分化マーカー陽性細胞が47.7%を占めていた。コロニーアッセイでは、c-Myc/ERT導入細胞は、4-HT存在下でCFU-Mixを含めたコロニー形成能が4-HT非存在下群と比較して2倍以上上昇していた。また、テロメレース活性の解析を行ったところ、これらの細胞は4-HT非存在下では7日間の培養によってテロメレース活性が消失したのに対して、4-HT存在下では同一期問の培養後もテロメレース活性が持続していた。 2.造血幹細胞の自己複製vs.分化の決定機構についての解析 c-Myc/ERT導入細胞の細胞周期制御分子の発現を検討するため、半定量的RT-PCR法による解析を行った。c-Myc/ERT導入細胞は、4-HT存在下で、4-HT非存在下と比較してcyclin D1,D2,D3,EおよびE2F1mRNAの発現上昇を認めた。DNAcontentの解析では、これらの細胞は4-HT存在下で4-HT非存在下と比較して、S-G2/M期の細胞比率の上昇を認めた。以上の結果より、細胞周期制御分子c-Mycは、細胞周期を促進的に調節することで、マウス造血幹細胞の自己複製に貢献していることが示唆された。 これらの研究成果は、第45回米国血液学会で発表し、現在、The Journal of Biological Chemistry誌に投稿中である。
|