1)脊椎動物を用いた解析 これまでに、当研究室では神経幹細胞を含む未分化神経細胞において機能している遺伝子として、マウスMusashi1(Msi1)を同定している。そこで、Msi1の発現を制御している因子を同定することにより神経系の増殖、分化を制御する因子の探索を試みた。まず、ヒトゲノムプロジェクトのデータとMsi1の翻訳領域近傍のゲノムシーケンスを比較し、種間で保存されている領域を同定した。さらに、この保存されている領域部分がMsi1の発現制御に与える影響を解析する簡便な系の確立を試みた。神経幹細胞を含む細胞集団の選択的培養法であるneurosphere法により培養した細胞に、この保存されている領域部分と各種mimimal promoterを組み合わせ、レポーター遺伝子としそGFPをつないだエンハンサー活性を検出する系の確立に成功した。さらに、より発生段階の早い時期の発現制御を解析するため、ニワトリ胚を用いた実験系の確立も行い、New cultureエレクトロポレーション法により上記と同様の解析を行える系を確立した。現在、これらの系を用いMsi1の発現制御を担っているシス領域を探索中である。 シス領域を特定後には、ワンハイブリッドシステム及びFar western blotting法により上流の制御因子を探索する予定である。 2)ショウジョウバエを用いた解析 ショウジョウバエ成虫型ニューロブラストで特異的に発現する遺伝子のプロモーター制御によりレポーター遺伝子lacZを発現する系統に、P因子をランダムに挿入した系統を200系統確立した。そのうちlacZレポーターの発現に異常を持つ系統を10系統得た。P因子挿入点付近のDNA配列をショウジョウバエゲノムデータベースを用いて検索し、原因遺伝子を推定した。In situ hybridizationにより発現パターンを調べたところ、中枢神経系に発現するものを複数得た。これらを中枢神経系に過剰発現させた系統の表現系も解析中である。
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