研究概要 |
本研究においては、DNA修復を含めたDNA代謝の諸活性の意義を重点的且つ包括的に追求し,抗癌剤感受性因子の正確な把握を行うことを目的とする。これにより今後、精度の高い感受性予測への道が開かれるものと期待される。本研究の最終的な目標は、造血器腫瘍の抗癌剤感受性におけるDNAミスマッチ修復機構の意義を明らかにすることである。しかしながらミスマッチ修復機構の活性測定系を有する施設は世界的にも少なく、現在活性測定系を樹立中であること等から、初年度はDNA代謝を司る酵素群のうち、Nucleotide代謝系酵素であるThymidylate Synthase(TS)の意義を明らかにすることとした。 まず、TSの活性を調節可能な細胞株の樹立を行うことと、TSの発現および活性測定系の確立を主な目標とした。 I.細胞の選定 代表的な株化細胞におけるTS活性を測定し、乳癌細胞株の一つである、MCF-7がTSの発現および活性が低いことを同定した。以上よりMCF-7をターゲットとして選定した。 II.発現ベクターおよび発現細胞の作成 Bone marrow Total RNAを用いて、RT-PCRを行い、TScDNAをクローニングした。現在このcDNAを可変プロモータ下にコードしたTS発現ベクターが完成しつつある。今後、TS発現ベクターをトランスフェクトし、TSの発現量を自由に設定可能な細胞株を作成する。 III.TS発現および活性測定系の樹立 TSの発現が可変的かつ定量的にみられているかの確認を、転写レベル、蛋白レベル、および活性レベルで行う。転写レベルの発現測定を行うためにcRNAテンプレートを用いたTaq Man法による定量的RT-PCR解析系をほぼ樹立した。また蛋白発現測定のためのWestern blottoing法および活性測定系も既に構築済みである。 次年度は本細胞株を用いて5-FU,MTX等の各種抗癌剤の活性を測定する。その際同時にTSの発現および活性が確かに可変的かつ定量的に変化していることを確認し、TSの発現および活性と、抗癌剤感受性の間の関数的関係を明らかにすることを最終的な目標とする。
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