研究課題
平成5年1月中旬から2月中旬にかけて4週間、ベトナム南部のキエンジャン付近、中部のニャトラン並びにダナン付近で、フイールド調査をベトナム側研究者と共同で行った。珊瑚礁並びに岩礁海岸の潮間帯・亜潮間帯で遊泳並びに潜水により生育量の定性的調査を行い、資源海藻として重要な紅藻テングサ科、ムカデノリ科、オゴノリ科、オキツノリ科、フジマツモ科、アマノリ属並びに褐藻ホンダワラ科の種の研究材料の採集を重点的に行った。将来の研究対象となり得る他のグループについてもサンプルを得た。得られた材料は、(1)顕微鏡観察用の液浸標本、(2)標本庫に納入する押し葉標本、(3)日本産種と詳細に比較検討を要するテングサ属、シマテングサ属、オキツノリ属、ムカデノリ科、オゴノリ属については培養用の生体標本、(4)寒天やカラゲナン強度(テングサ科・シマテングサ科・オゴノリ科・ミリン科・オキツノリ科)及び生理活性物質探索(フジマツモ科のソゾ属)のための化学分析用の乾燥試料とした。ニャトラン付近でベトナム側に継続的フイールド観察と標本の採集を依頼し、オゴノリ属とキリンサイ属ではベトナム側との共同でフアンランとニャトランで養殖試験を開始した。今回の調査と平成4年3月に行った事前調査の結果から得られた新知見並びに明らかにされつつある興味ある知見を以下に要約する。ベトナム産オキツノリ属4種を、北太平洋に生育する他の9種と比較検討してそれらの特徴を明らかにした。ホンダワラ属では特徴が不明瞭であった種の分類学的特徴が明らかになったことや新種として認識されるべき種も採集された。ベトナム中部沿岸に多産するホンダワラ属の一種、Sargassum mcclureiのヨード補給のための薬用茶としての利用を論文としてまとめた。キリンサイ属の一種、Eucheuma gelatinaeは利用価値の高いカラゲナンのゲル強度を示しており、ベトナムでの有望な海藻資源になり得る可能性が推察されている。
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