研究分担者 |
KASEREKA M. ザイール自然科学研究所, 地球物理学部門, 研究員
SASSA M. ザイール自然科学研究所, 地球物理学部門, 技術官
AKUMBI M. ザイール自然科学研究所, 地球物理学部門, 技術官
MAVONGA T. ザイール自然科学研究所, 地球物理学部門, 研究員
WAFULA M. ザイール自然科学研究所, 地球物理学部門, 研究員
ZANA N. ザイール地球科学研究所, 所長
西村 太志 東北大学, 理学部, 助手 (40222187)
森田 裕一 東北大学, 理学部, 助手 (30220073)
笠原 稔 北海道大学, 理学部, 助教授 (40001846)
石井 紘 東京大学, 地震研究所, 教授 (30004386)
MORITA Y. Fac.Sci., Tohoku Univ., Assoc.Res.
ISHII H. Earthq.Res.Inst., Univ.Tokyo, Prof.
|
研究概要 |
(1)地球上でアフリカ大陸及びその周辺部にホットスポット火山が集中する原因は地球深部特にマントル下部から地球中心核(コア)の不均質性の空間分布に起因することを明らかにした.従来の解釈ではコアは均質な構造をもつものと解釈されてきたが,コア最上部の外核の地震波速度分布には半球的な次数1の不均質パターンが存在することが明らかになった.更に,観測データを増やしアフリカ直下の構造の特異性について内核・外核境界近傍の速度構造をPKP(-BC,-DF)波を用いて調べた.その結果,内核最上部のP波速度は経度0°を通る子午線を境に,東側のアフリカ側で標準走時より0.5%速く,西側で0.5%遅いという半球的なパターンが存在することが示された.これらの結果からアフリカ直下の地球深部は不均質性の符号が変化する境界に位置する特異な領域であることが判明した. (2)アフリカ大陸のように標準時報の受信できない地域での地震観測の最大の障害は刻時精度の維持にある.この問題はGPS(Global Positioning System)衛星からの時刻情報を受信して校正するGPS時計を開発し解決した.本年度は低消費データロガーを自作しそれとGPS時計を組み合わせて長期無人観測の測器の開発に成功した.さらにそれらを基に製品化への移行に取り組み,ハード面に加えて,自然地震やその他の計測に利用できるようソフト面を整備した.その結果,アフリカでの臨時地震観測で高品質の観測データが取得可能となった. (3)東アフリカ地溝帯のホットスポット火山の中でも調査対象としてザイール東部のニイラゴンゴとニアムラギラ火山を中心に観測・調査を継続してきた.これらの火山は平成6年6月23日及び7月4日に相次いで噴火を開始した.ちょうどこの時期にルワンダの政情不安に端を発し100万人に達する難民が噴火活動中の極近傍の難民キャンプに避難してきた.このため,この地域の火山災害の防止という観点から緊急調査を実施すると共に調査内容を再検討せざるを得なくなった.更に,我が国からもルワンダ難民救援隊がゴマに派遣され,救援活動を実施した.このような情勢下に於いて,外務省及び国連難民高等弁務官事務所(UNCHR)からの現地調査依頼もあり,当初の調査・観測計画全体の見直しを行うと共に噴火観測体制の強化を図った.それらの結果は現地行政機関やUNCHR等に伝達し火山災害の防止に役立てている. (4)ニイラゴンゴ火山の噴火開始は6月23日であるが,前兆的火山性微動は約2週間前の6月9日から間欠的に発生した.噴火後も火山性微動は間欠的に継続している.微動の発現期間は火映現象や噴煙が目視された期間と完全に一致していることから,溶岩湖へのマグマの供給に伴う運動が微動の原因と推測された.噴火の初期の頃にはこの運動は傾斜計にて「傾斜微動」として観測され,その周期には数100秒の成分が含まれていることが確認された.平成6年12月中旬に間欠性の周期に変化が起きた後,微動は連続的発生様式に移行した.これらの観測データは,噴火開始以来約6カ月間かけてニイラゴンゴ火口直下にマグマが抵抗なく上昇できる火道が形成された事を示唆するものである. (5)平成6年8月15日から平成7年3月8日の期間に2.8x10^7m^3の溶岩が火口に供給された.この間の供給率はは1.4x10^5m^3/日である.この値は12年前の溶岩湖の出現した際の最大供給率(2.5x10^6m^3/日)に較べて1桁小さい.現在の供給率が継続すると仮定すると1年8ケ月後には溶岩湖面は第1テラスに達し,側噴火の可能性が高まる. (6)噴火活動に伴う火山性A型地震はニイラゴンゴ火山の直下ないしやや北側に発生している.しかし,震源の深さは約15kmと深く,浅発の地震はない,地震は数組のEarthquake Familyに分類され深部で選択的な破壊が進行している事を示唆する. (7)上記の地震活動の発生期間には微動の発生はなく,また,微動の発生期間には地震は発生せず,これらの間には相補的な関係がある. (8)地殻変動データからは噴火開始以来ニイラゴンゴ火山の山体が膨脹する傾動が認められる. 火山周辺の100万人に達する異常な人口密集地帯の極近傍で,以上の観測結果に示されるマグマ活動が今日も継続している事から,噴火災害の防止の観点に立ち現地の観測体制を更に強固なものにし,観測の継続実施が将来的に必要であると理解された.
|