研究課題
8月5日〜9月1日に中国人研究者2名を招へいし、Euchresta属葉緑体DNAの分子系統学的解析を行った。その結果、日本、中国に分布するE.japonicaと台湾のE.formosanaとが単系統群であることが明らかになった。9月19日〜11月13日に中国南部(広東省、湖南省、広西省、海南島)で本調査を行ない、ソラマメ亜科のDesmodieae連、Phaseoleae連およびジャケツイバラ亜科のCassieae連を中心にこの地域の固有・準固有種をはじめとする多くの種の押し葉・液浸標本を作成し、100点以上の葉緑体DNA解析用試料を得ることができた。押し葉標本は、現在、東北大学、琉球大学、華南植物研究所で分類学的および植物地理学的研究を進めている。海南島では新記録の種(Phyllodium kurzianum、Lespedeza cuneataなど)が見つかった。液浸標本では、果実の比較解剖学的研究を行っている。Desmodieae連とMillettieae連では果皮の層構造に属間あるいは種間で違いが認められ、また、ジャケツイバラ亜科Cassieae連の果実はソラマメ亜科のものと構造が全く異なることがわかってきた。これらのデータにより果皮構造の分類あるいは系統学的意義が明らかになりつつある。葉緑体DNAの解析は、現在、最もサンプルの多いDesmodium属とその近縁属を中心に行っている。葉緑体DNAの制限酵素断片長多型解析では、種内および種間変異が見つかっており、種内分類群間および種間の系統関係およびそれらの東アジアにおける地理的分布が明らかになりつつある。また、rbcL遺伝子塩基配列の比較検討も行っており、Desmodium属は単系統群ではなく、側系統群であることが明らかになってきた。
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