研究課題
ほぼ当初計画どおりの調査が実施でき、調査地域における道教の現状について、期待した成果がおおよそ獲得できた。天津には道教協会の活動がなく、有名な天后宮は単なる観光名所となっていること、玉皇閣はある中学校内に廃屋として倉庫がわりに使われていること、呂祖廟には道教関係の遺物はほとんどないこと等が判明した。これを始めとして、以下、調査対象地域全般においてこのような新知見を得た。遼寧省では大連近辺の金県にも道観があり、道士がいること、丹東北部の鳳凰山にも少数ながら道士がおり、道教活動があること、本渓県郊外の鉄刹山の道観の状況などを知った。山東省では〓山の道教活動を詳細に調査したほか、文登県の状況を新たに知った。河南省では洛陽北郊の〓山の散在する道観の状況を把握した。これらの道観の活動の実態、道観の歴史もまた新知見に属する。崇山中岳廟は大道観であるが、比較的多くの時間を割り当てて、道士の状況もある程度理解できた。西安において、中国道教協会や西安市宗教局等が主催する道教文化研討会に招聘され、会議に参加した。その会議において各地研究者との交流を果たし、湖北武当山道協の会長の知見を得た。その結果、武当山では当地道協の全面的な協力を得て、明代の道像をはじめとする貴重な文物の撮影が許可された。これは日本人として初のことであり、写真の資料的価値は絶大である。江蘇省の茅山頂宮、印宮、蘇州玄妙観でも当地の道協の全面的協力を得て現状調査および資料収集を行ない、上海道教の現状も改ためて再確認した。次年度は主として長江以南の浙江省、江西省、福建省、広東省、湖南省について、初年度同様の調査を最大限に行なう予定である。
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