研究分担者 |
SOSAーNISHIZA ニシザキ オスカー エンセナダ調査研究高等教育機関, 研究員
SERGIO Marti ニカラグア中央漁業研究所, 所長
田中 彰 東海大学, 海洋学部, 助教授 (90138636)
大竹 二雄 東京大学, 海洋研究所, 助手 (20160525)
石原 元 株式会社水土舎, 主任研究員
小川 和夫 東京大学, 農学部, 助教授 (20092174)
渡部 終五 東京大学, 農学部, 助教授 (40111489)
谷内 透 東京大学, 農学部, 助教授 (00012021)
SOSA-NISHIZAKI Oscar Researcher, CICESE, Mexico
MARTINEZ C. Sergio Director, CIP, INPESCA, Nicaragua
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研究概要 |
2年間の調査研究のうち,平成4年度は予備的な調査による淡水産板鰓類の情報収集,平成5年度は現地調査を通して資・試料の入手に努め,以下のような研究成果を得た. 1.種類:サメはオオメジロザメCarcharhinus leucas1種が各地で採捕された.メキシコの太平洋岸とカリブ海につながる河川湖沼域とその河口部で得られた標本の形態測定値,脊椎数などの形態的特徴の比較,ミトコンドリアDNA解析による系群や個体群レベルでの異同を検討中である.さらに,前回の国際学術研究により入手したオーストラリアとパプアニューギニアのオオメジロザメと今回入手した同種の標本間の形態的・遺伝的な相違の有無も検討している.エイはノコギリエイPristis perottetiがニカラグア湖で1尾採集されたにとどまった.本種は東南アジアやオーストラリア・パプアニューギニアから報告されているP.microdonと同種とされていたが,検討を加えた結果少なくとも吻の両端に並ぶ棘数に違いが認められた.しかし,採集標本数が1尾であるため他の文献からの資料も用いて分類学的再検討を加える予定である.また,遺伝学的解析による異同も検討中である. 2.分布:今回の調査と文献上の出現報告から見ると,オオメジロザメとノコギリエイはメキシコからパナマまでの太平洋岸とカリブ海および河川湖沼域に広く分布することが判明した.本調査では,メキシコ湾に注ぐウスマシンタ川の本流域とそれに連なる礁湖から5尾のオオメジロザメを採集した.本流域から得られた4尾は小型の生後間もないサメであったが,礁湖のサメは210cmに達する成熟した雄で,従来淡水域で採集されたサメのなかでは最大であった.ノコギリエイはニカラグア湖から1尾しか採集できなかったが,広範囲の聞き込み調査から本種はコスタリカの太平洋側に注ぐいくつかの河川に分布することが乾燥したのこぎり状の吻により確認された.しかし,文献に出現記録があるメキシコの太平洋側の河川には現在ノコギリエイは分布しないと結論された. 3.生息状況:メキシコの太平洋岸のテアカパンにおける調査から近年オオメジロザメの資源は激減しているものと推定された.ウスマシンタ川とその河口近くの沿岸域では従前ほどではないが,漁獲量は比較的安定しているとの情報を得た.しかし,過去に多数の板鰓類が分布していたという報告があるニカラグア湖とサンフアン川,その分枝であるコロラド川では資源は著しく減少しているものと推測された.特にニカラグア湖では短期間ではあったものの集中的に調査したにも関わらず,サメの捕獲はなくわずかにノコギリエイが1尾採捕されたにとどまった.聞き込み調査からの近年板鰓類は激減しているとの情報と併せて考えると,ニカラグア湖の板鰓類は絶滅状況にあるものと推察される.コスタリカの太平洋側での聞き込み調査でも,特にノコギリエイの資源は激減しているとの情報を得た.総じて中米の淡水産板鰓類の生息状況は危機に追い込まれていると判断される. 4.生態:採集尾数がきわめて少なかったため,生態についての知見はほとんど得られなかった.オオメジロザメの年齢と成長に関する報告に基づけば,ウスマシンタ川の小型のサメは生後1年未満で,大型のサメは5歳と年齢を推定したにとどまった.湖のサメの胃内からティラピアの頭骨が出現した.なお,脊椎骨中のストロンチウム含量分析による淡水生活の履歴期間の推定は現在検討中である.ニカラグア湖とサンフアン川で得られた消化管内の寄生虫は現在種を査定中である. 5.生理:浸透圧の調節とイオン組成及びその濃度を検討するため,血清を日本に持ち帰り分析を行った.まず,ウスマシンタ川で採集したオオメジロザメでは尿素濃度は海産のそれの3分の1,浸透圧は海産のそれの約3分の2であった.ニカラグア湖及びサンフアン川流域で採集したオオメジロザメおよびノコギリエイの浸透圧とイオン濃度は現在分析中である.また,過剰なイオンの排出器官である直腸腺の形状や機能については組織学的手法を用いて分析中である.
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