研究課題
昨年度採集した有害動物の毒素の解析を行なった。タマタブ地区より得られたアシナガバチ(Polistes olivacens)毒からマスト細胞脱顆粒因子として2種類の新マストパランのアミノ酸配列を決定した。チンバザサで採集したクモ(Cerastris sp.)毒から、全く新奇な神経毒を単離した。構造はカダベリンを中心に一方のアミノ末端にPhe-Asnが、他方のアミノ末端にN-ボルミルリシンとアルギニンの結合した構造であった。同じクモ毒からアミノ酸85個からなる麻痺性蛋白毒素を単離してアミノ酸配列を決定した。アンダシベ地区のシロアリから3種のトリネルビタン骨格をもつ警報物質を得、MS-MSにより構造を決定した。またマンテラ属のカエル皮膚から多数のアルカロイドを単離した。これらの結果は平成5年9月22日〜25日にマダガスカルで開催されたNAPRECA会議で発表した。この際、中嶋は乾期での動物調査を併せ行った。平成5年12月16日〜平成6年1月23日にわたりマダガスカル島全域で、一昨年度の調査で選抜された有毒動物の採集、採毒を行った。調査地区はアンタナナリボ、アンダシベ、アンパトランピ、アンガボケリ、イサロ、チュレアル、アンカラカ、ラノマファーナ、モナミサハ等自然保護区内で採集許可をとり行った。今回は新たなマンテラ属のカエルの他にScaphyophryne属と思われるカエル、イサロ地区でサソリ2種(200匹)Nephylengis属、Araneus属のクモ(夫々50余匹)、アンパトランピ地区でSphex属のハチ数匹、さらに個体数は少なかったが各地でハチ、クモ、サソリ類を採集した。これらの有毒動物はアンタナナリボ大学で毒腺の処理を行い、凍結乾燥品として日本に持ち帰った。今後、これらにつき毒成分の解析を行う予定である。
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