研究課題
本研究は、急速に発展しつつあるアジア地域の発展途上国の海岸線において、農業開発あるいは都市・港湾開発によって海岸環境にどの様な変化がもたらされているかを定量的にとらえようとするものである。本年度はまず、タイ、ベトナムについて集中的な調査を行い、インドネシア、マレーシア、バングラデシュについては来年の本格的な調査を前段階としての予備調査を行った。まずこれら予定されている調査対象国の研究分担者、研究協力者を横浜に召集し、戦略的に調査を行うためのワークショップを開催した。このワークショップでの議題はそれぞれの国の沿岸環境問題を専門的に討議し、それぞれの発展にともなって抱えている問題を浮き彫りにし、さらに調査を効果的に行うための戦略を研究チーム共通のものとすることであった。次にタイとベトナム両国を主な調査先として、日本側の研究者が出張し、沿岸の環境問題をタイについてはSuphat教授、Sutat助教授と共同で、またベトナムについてはQuang教授An講師と共同で環境変化の具体例について検討した。タイ国ではおもに東海岸の工業港周辺、南部の低開発地域を主な調査対象とし、ベトナムでは南部のメコンデルタの河口周辺部およびブンタオ港周辺を主な調査対象領域とした。さらにインドネシアに出張し、次年度の本格的調査に備えた。これらの地域での海岸線は現在大きな変化に直面している。その第一のものは沿岸地域の開発の進行であり、埋め立てや浚渫による港湾の建設は沿岸部の浅海域を消失させ、生態系に大きな変化をもたらす。また、工業地域や都市部の排水、さらには沿岸部での魚介類の養殖による海水の汚染・富栄養化も深刻な問題となる。これらの地域での開発のテンポは、かつてどのような地域も経験したことがないほど急激なものであることが解った。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)