研究課題
昨年度、この学術調査により始まったポンペイでの広帯域地震観測は、初期にはいくつかのトラブルもあったが、現在は順調に進んでいる。トラブルの内容は(1)停電が予想以上に多く、用意したバックアップシステムの能力が足りない。(2)JJYやオメガ等の標準電波を使った刻時システムは、送信局(日本が一番近い)から遠く、受信状態が良くない。等であった。(1)については大きな無停電装置を用意することは難しいので、停電があってもファイルが壊れるなど直接の被害を受けないようプログラムを改良し、欠測についてはあきらめることにした。(2)についてはGPS衛星を使った方式の刻時装置を採用することで解決できた。この観測点は小さな島にあるので波浪の影響などノイズが大きくなることが心配されるので、色々な期間について犬山や他の静かな観測点のノイズと比較をしてみた。結果、明らかに波浪の影響である2〜3秒のノイズは大きいが、10秒を越える長い周期ではあまり差はないことが分かった。1年余りの観測で得られた記録のうち、震源がポンペイから1000〜2000kmの所にあり、アリアナ海盆やオントンジャワ海台を通って来る表面波を解析し、この付近の地殻と上部マントルのS波構造を求めた。その結果、マリアナ海盆を伝播する表面波の群速度は非常に速く、100km程度の厚いプレートであることが分かった。このプレートの厚さは、この付近が南太平洋で一番古い海洋底であることに一致する。また、オントンジャワ海台を伝播する表面波の群速度は古い海洋底であるのに遅く、高周波側が特に遅い。これは海洋底にも関わらず地殻が30km以上の厚さであることで説明される。