研究課題
インドネシアにおいては、世界有数の恵まれた天然薬物(薬用植物)資源をベースとした民間薬および民間医療が、人々の保健医療に大切な役割を担っている。しかし、それら天然薬物資源に対する科学的なメスはほとんど加えられていないのも現状である。本学術調査においては、インドネシアにおける未開拓の天然薬物資源の発掘を目的として、過去3回の調査に引き続き、モルッカ州アンボン島における、民間薬と香料の市場調査および中部スラウェシ州における民間薬、民間医療および薬用植物調査を行い、以下に示す成果を得ることができた。モルッカ州アンボン島は、香料諸島と呼ばれる同地域の物流の中心地である。市場(パッサル)において貴重な香料標本5種を入手するとともに、現地の民間医にインタビューし、2種の化学研究用薬用植物を採集した。中部スラウェシ州においては、ポソ湖周辺の内部高原地方、コロノダレを中心とするモルッカ海トーロ湾沿岸の西部海岸地方およびマラリア汚染地域でもある北東部セレベス海に面したブオル・トリトリ郡各地において20箇所余りの村落を訪問し、種々の病気特にマラリア、腫瘍、リウマチの治療に、民間医(ドクン)が用いている薬物の情報を収集した。そして、それらの情報をもとに23種の化学研究用薬用植物を採集することができた。今回の学術調査で収集した保存用および化学研究用薬用植物については、インドネシア側共同研究機関であるインドネシア国立生物学研究所・ボゴール植物標本館にて同定の後、大阪大学に輸送した。また、民間医療に用いられる薬用植物に関する情報および保存用植物標本については、大阪大学とボゴール植物標本館の双方にて保管している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)