研究課題
中国農村における市場化の実態を明らかにすることが、本研究の目的である。本研究では、すでに研究代表者ならびに研究分担者が広東省において行った実態調査(平成3年度〜平成4年度)を出発点として、経済発展が比較的進んでいる中国沿海地域の中から、さらに江蘇省と浙江省を選び、それらの地域で実態調査を行うことによって、この国の農村における市場化の実態をトータルに研究することを企図している。平成4年度は、当初計画にもとづき、平成4年12月18日〜同12月30日、江蘇省蘇州地区の農村において県・鎮・村政府および郷鎮企業における聞き取り調査と、販売担当者へのアンケート調査を実施した。本研究は来年度も継続の予定であるが、現時点までに明らかになった点だけをまとめておく。1.地方政府の果たす役割は、かなり限定されたものであり、「市場化」の進展は政府主導型というよりも、企業が「市場志向」的に行動した結果であるように思われる。ただし、政府と企業の関係は密接であり、企業の利益は地域コミュニティに還元されている。2.郷鎮企業の発展方式には、地域的な差異が見られる。広東省が労働集約的方向に進んでいるのに対して、江蘇省ではむしろ技術集約的方向への志向が強い。このため、江蘇省では内陸地域からの労働力移動が進まず、労働力市場の形成が遅れている。反面、上海など都市部からの技術移転にはかなりの進展が見られる。3.全国規模での原料調達・販売のネットワークが形成されているが、「専業市場」の観察から明らかにされるように、その内容は平板であり、流通システムの不備がそうした市場を成り立たせている条件であるように思われる。また、販売はもっぱら特定の個人による人的ネットワークを通じて行われている。
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