研究分担者 |
韓 康信 中国社会学院, 考古学研究所, 副研究員
潘 其風 中国社会学院, 考古学研究所, 研究員
小山田 常一 長崎大学, 歯学部, 助手 (00244070)
真鍋 義孝 長崎大学, 歯学部, 助手 (80131887)
佐伯 和信 長崎大学, 医学部, 助手 (80195966)
分部 哲秋 長崎大学, 医学部, 講師 (50124847)
木下 尚子 梅光女学院大学, 文学部, 助教授 (70169910)
植田 信太郎 東京大学, 理学部, 助教授 (20143357)
HAN Kangxin Institute of Archaeology, Chinese Academy of Social Science
PAN Qifeng Institute of Archaeology, Chinese Academy of Social Science
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研究概要 |
日本人の起源や日本人の形質の成立に関しては、日本の古人骨の研究のみで解決できるものではなく、近隣諸国の古人骨の形質人類学的研究が並行して進展する必要があるという視点から中国の古人骨調査を平成2年度・平成3年度に引き続き、平成4年度も行なった。弥生文化は中国や朝鮮半島からの影響が強いといわれており、特に中国・江南、華南地域との関連が指摘されていることから、この地域での古人骨の調査を行ない、北部九州地域の弥生人との比較研究を続けている。この地域での人骨の出土量は少ないが、山東半島では今から5,000年前〜2,000年前頃までの人骨が数的にある程度まとまって出土しており、平成3年度から「五村」遺跡と「付家」遺跡から出土した人骨と歯の調査などを行なっている。今年度も前年度に引き続いて、「五村人骨」と「付家人骨」などの骨と歯の計測および非計測項目についての観察などを行なうとともに、人骨の出土量が多い新彊ウイグル自治区での予備調査を行なった。 山東半島では人工頭蓋変形が「大〓口人骨」ばかりではなく、「王因」などにも存在するし、抜歯は「五村人骨」や「付家人骨」に認められる。また、形質的にみると骨質はやや固いが、顔面の高径はやや高く、鼻根部は扁平で、北部九州弥生人の特徴の一端がうかがえる。このように山東半島の古人骨には、北部九州の弥生人には認められない風習的抜歯は存在するものの、形質的には非縄文人的特徴が比較的強く表われている。また、このような形質的特徴は漢代の人骨にも認められ、山東半島では時代差が小さかったようである。今回調査できた人骨は、5,000年前の人骨と2,000年前の人骨群であったが、量は前者が多く、後者は少ない。これらの人骨と歯には北部九州弥生人と共通する特徴が認められることから、山東半島は渡来系弥生人の原郷の有力な候補地のひとつになるであろう。しかし、調査できた弥生時代相当期の人骨の量は著しく少なく、また必ずしも身体のすべてにわたって共通した特徴を持っている訳ではないので、現地点で山東半島を渡来系弥生人の故地であると断定することはまだできない。 また、頭蓋の計測値を用いてクラスター分析を行なってみたが、中国の古人骨はそれだけでひとつのクラスターを構成し、日本の弥生人や縄文人とはかなりかけ離れてしまう結果になった。これは中国と日本人との形質的分離がかなり早くから生じていた可能性を示唆しているようである。 山東半島でもまだ調査できなかった人骨が多数あるので、今後も共同研究者の協力を得て山東半島、江南地域の古人骨群を中心にしながら各遺跡ごとにその特徴を明らかにし、日本の古人骨との比較を今後も丹念に行なっていく計画である。
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