研究分担者 |
ツルハ アデフリス アジスアベバ大学, 理学部, 講師
ラフェリ ゲメチュ アジスアベバ大学, 理学部, 助教授
星野 次郎 姫路独協大学, 一般教育部, 助教授 (60199479)
庄武 孝義 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00003103)
森 明雄 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027504)
河合 雅雄 財団法人, 日本モンキーセンター, 所長 (10027477)
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研究概要 |
当初の計画では,本年度,エチオピアの南部のバレ,アルシ地方に生息するマントヒヒ,アヌビスヒヒおよびゲラダヒヒの雑種個体群の社会・生態変異,その遺伝子組成との関係を研究する予定であった。しかし,政情不安と安全性の理由から,南部での雑種ヒヒの研究をあきらめざるを得なくなり,急きょ調査対象を,北部に生息するゲラダヒヒ個体群へと変更した。森および岩本は,アビシニア高原の東端に生息するゲラダヒヒの社会学的,生態学的調査をそれぞれ4カ月,2カ月に渡って行った。その結果,この地域のヒヒは社会的性比が異常に高いため,単雄群としてのまとまりがルーズであり,これまでのゲラダヒヒ社会とは異なる様相を見せていること,また禾本科食に完全に適応していると考えられていたこの種が環境によっては双子葉食に傾ける順応性もいまだ保持していることなどを発見した。庄武および星野はアビシニア高原北端のセミエン国立公園のゲラダヒヒの分布地理学的,社会学的調査をそれぞれ2カ月間行った。庄武は,広域踏査の末,これまで生息不可能と考えられていた高度4600mの高地で大個体群を発見した。さらに庄武はこの土地のゲラダヒヒの血液サンプルの遺伝学的分析も行った。星野は群れの連続追跡により,ゲラダヒヒの単雄群はオスの統率力でよりはむしろメス同士の関係によってまとまっていることを示唆するいくつかの行動観察事例を得た。河合は未だ分布および亜種分類が不明なアビシニア高原北東部のラリベラ周辺で分布調査を行い,必要な資料を収集した。また,マントヒヒの共存地域も新たに発見した。 以上,本年度の調査により,ゲラダヒヒに関する既存のイメージをうち破るいくつかの研究成果を得ることができた。これらの成果は,今後,アビシニア高原を舞台にしたヒヒ類の適応放散過程の解明に,貴重な資料を提供する。
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