研究課題/領域番号 |
04041088
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 早稲田大学 (1993-1994) 横浜市立大学 (1992) |
研究代表者 |
弦間 正彦 早稲田大学, 社会科学部, 助教授 (90231729)
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研究分担者 |
WLODZIMIERZ レンビッシュ ワルシャワ経済大学, アグリビジネス学科, 準教授
FRANCISZEK T ワルシャワ経済大学, アグリビジネス学科, 教授
本台 進 大東文化大学, 経済学部, 教授 (70138569)
REMBISZ Wlodzimierz Department of Agribusiness, Warsaw School of Economics
TOMCZAK Franciszek Department of Agribusiness, Warsaw School of Economics
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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キーワード | ポーランド / ポーランド農業 / 東欧農業 / 市場経済 / 国営農場 / 民営農業 / 農業保護 / 土地所有権 |
研究概要 |
市場経済への移行に1990年より取り組んでいるポーランドにおいて、需要サイドの経済調整政策は一応の成果を修めつつあるが、供給サイドの構造調整はなかなかはかどっていない。そしてポーランド経済の基礎となっている農業部門の生産性を上昇させることは、現在の供給サイドの構造調整の中心的課題になっている。 この研究は、1950年から1988年までの市場経済移行以前のポーランド農業における国営農業部門と民営農業部門の生産構造、生産技術、生産要素の利用、全要素生産性の変化を比較分析し、両部門の相違点を明らかにし、それが生じた要因を分析するものであった。そして本研究により、生産技術・経営組織に関して自由度が高くまだ利潤最大化が可能でかつ異なったインセンティブ構造を持っていた民営農業部門であったが、生産投入財市場や生産物市場が政府によって独占状態にあったため生産性の向上が阻害されていたためにパフォーマンスも必ずしもよくなかたことが確かめられた。 さらに1989年からの市場経済への移行後にとられた主要政策により、この農業部門がどのように変貌を遂げつつあるか生産構造の変化が掌握された。まず、補助金の削減と貿易の自由化により農業部門に対する保護が著しく低下したことが観察された。さらに緊縮的な財政・金融政策により総需要が抑制されたために農産物に対する需要も低下し国際競争の激化とあいまって農産物価格の低迷が見られた。これはさらに農産物供給を低下させ農業部門の収益率を低下させることとなった。政府の農業部門の保護は、関税率の引き上げ等により復活基調にあるとはいえこの部門は大きな転機をむかえている。実質金利も高く市場条件も厳しい中で生産構造変化が遅々として進まない民営農業部門と、負債を抱え民営化もあまり進まず規模の経済を生かしきっていない旧国営農業部門の現状が確認された。そして農業生産性の向上と農産加工を含む農業関連産業の発展がこの農業部門の経済成長への今後の貢献を考えた場合に急務の課題となっていることも確認された。これは西側の先進国も直面している構造上の問題であると考察された。 ハンガリー等地の東欧諸国が土地所有権再移転に伴う問題に直面して農業生産が低迷している中で、民営農業部門の割合が大きかったために土地所有権再移転問題がそれほど深刻でないポーランドにおけるこれらの構造上の問題は今後の他の東欧諸国における農業部門の課題を先取りする意味で重要な政策的含意を持っているものと考えられる。 このようにポーランドの農業発展を規定する経済的要因と非経済的要因が改革前後においてどう変わってきているのかが明確にされた。さらに平成6年度においては、個別農家聞き取り調査も実施され、国レベルのマクロの変化のみならず農家レベルにおける改革による経済環境の変化と農家の対応についてその実態が把握された。本年度と以前からの調査・分析結果を踏まえ、研究代表者及び研究分担者は共同でとりまとめ作業を行った。この目的もあり研究代表者は現地に行き、現地研究分担者と共同で取りまとめ作業を実施した。さらに研究結果は、ポーランドや米国において発表されこの分野の研究者と意見交換がなされた。 このように現地派遣される研究代表者は、現地研究分担者と本研究プロジェクトに関する分析結果のすりあわせを行った。これは整合性を持った形で全体の取りまとめをするために必要な作業であった。また、ポーランド農業を取り巻く情勢は刻々と変化しており、政策的含意を考察する上で必要になる最新の経済・農業政策について情報を入手するためにも現地派遣は必要であった。さらに同時に、研究結果のポーランドと米国における報告も同時に行われ貴重なコメントを得ることができた。これも、研究結果を国際的に公表し意見の交換をはかるために必要な作業であった。 今後、分析結果を本の形にまとめ、研究成果を公表する計画である。
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