研究分担者 |
篠田 隆 大東文化大学, 国際関係学部, 助教授 (20187371)
高橋 昭雄 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
吉松 久美子 大東文化大学, 国際関係学部, 講師 (70240348)
水野 広祐 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
長沢 栄治 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
原 隆一 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (70198901)
梅原 弘光 立教大学, 文学部, 教授 (00160325)
桜井 浩 久留米大学, 商学部, 教授
多田 博一 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (80188250)
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研究概要 |
アジア諸国における灌漑組織の比較研究にとって,今年度は1年目にもかかわらず,大きな成果があった。それは途上国の多くが末端水路の維持・管理機能を農民の組織団体に移し,水利行政の変化が明らかになったことである。まだ,この動きはかならずしも全体的な広がりを見ていないが,着実にその方向に向かっている。途上国政府は灌漑配水路の維持・管理にこれまで多額の財政資金を支出してきたが,その負担は大きく,しだいに財政赤字を圧迫する状況になっていた。途上国政府はこうした状況を克服するために,農民に水利費課税を開始するか,または水利費の増額を計ってきたが,これには農民の反応はかならずしも芳しくない。そこで末端灌漑施設の維持・管理を農民自身の手に委ねる方向が打ち出されるようになったのである。途上国全体がこうした方向に同時に進むうえで大きく貢献している組織が国際水利経営研究所(International Irrigation Management Institute.通称IMII)である。ここで多くの資料を収集した。 この研究はスリランカのコロンボにあるが,途上国を中心に多くの支部をもち,各国の水利組織や関係行政の調査・研究を精力を注いでいる。IMIIは1984年に設立されたが,ここ数年上記のような方針を打ち出し,各国にも協力を要請している。その結果,インドネシア,インド,スリランカ,フィリピンなどの国々においてん農民レベルにおける水利組織の自治化政策が打ち出されるようになっている。インドネシアには地域によりもともと水利自治組織があったが,その傾向が一層強化されるようになっている。 問題は自治組織化は水利費の徴収・増額を伴うが,農民からいかにしたが順調に徴収できることができるか,という点にある。そういう観点で途上国の末端水利組織はいま,まさにターニング・ポイントにあるといえる。
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