研究概要 |
8月17日より6名からなる調査隊を約1ヵ月半にわたりパキスタン回教共和国に派遣した。まず,カラチ博物館,ラホール博物館,ペシャーワル博物館,タキシラ博物館,チャクダラ博物館などの所蔵資料の調査,資料写真の撮影を行ない,ガンダーラ地方において,タフティ・バヒ,メハサンダ,チャールサダ,タキシラとその周辺遺跡,スワート地方においてブトカラ,ガレガイなど,主に仏教遺跡を中心に踏査を行なった後,北西辺境州内のハザーラ地方の踏査に着手した。同地方はインダス河東岸に位置し,南北約180km,東西約40kmの地域が,北からコーヒスタン,マンセーラ,アボッタバード,ハリプールの4地区に分割されている。今年度は,ハリプール地区(9ヵ所),アボッタバード地区(5ヵ所),マンセーラ地区(14ヵ所)において,計28ヵ所の遺跡を踏査し,各遺跡の位置,現状,表面採去遺物の登録を行ない,遺跡,採取遺物の撮影を行なった。特に重要と思われるものについては,遺跡の性格などについて若干の考察を行なった。その内訳は,我々の研究目的とする古代交易路の解明に重要な手掛りとなる都市遺跡と,紀元後数世紀にわたりこの地域で盛行していたと考えられる仏教遺跡からなり,ハリプール南部を除く約3分の2の遺跡が未だに正式報告のなされていない新発見のものである。これらの遺跡は,ガンダーラ文化研究のみならず,同地方の文化と西アジア文化,あるいは中国文化とを結ぶ貴重な資料となるものである。なお,その結果は,Archaeological Survey in pakistan -A Preliminary Report of 1992 season in Hazara Division,N・W・F・P・-と題するレポートにまとめ,パキスタン考古・博物館総局へ提出した。
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