研究課題
本年度の活動および得られた知見は以下の通りである。一、前年度に引き続き、タイ国内東北部のクメール石造遺跡についての劣化状態と保存対策について、タイ国芸術局考古部の専門家と共同で、現地調査を行い、また、現地の専門家を交えて協議を行った。一、前年度定めた2箇所の調査フィールド(パノン・ルン遺跡、ムアン・タム遺跡)に、コンピュータ制御長期無電源温・湿度連続測定システムを設置し、測定を開始した。これにより、外気の温・湿度、石の表面と内部の温度を一時間毎に測定し、記録することができる。集積されたデータは、来年度現地において読み出し、解析する予定である。本測定システムは、その後もできるだけ長く現地に設置したままとし、長期にわたるデータの集積を行う予定にしている。一、関連調査として、パリのユネスコ本部で開かれた「アンコール遺跡保存技術会議」に出席し、協議を行い、また情報の収集に努めた。タイ東北部の石造遺跡は、アンコール遺跡と同じクメール遺跡であり、種々の有益な情報が得られた。一、国内・外の関連文献資料を収集し整理中である。一、タイ国東北部の石造遺跡に用いられている石材は、砂岩およびラテライトが中心であるが、場所、時代によって、その劣化状態は一様でなく、材質の岩石学的調査、地域環境の調査が重要であることが再確認された。