研究課題/領域番号 |
04041117
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
須藤 健一 国立民族学博物館, 第4研究部, 助教授 (10110082)
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研究分担者 |
前川 啓治 筑波大学, 歴史人類学系, 講師 (80241751)
棚橋 訓 北海道東海大学, 国際文化学部, 講師 (50217098)
遠藤 央 鳥取大学, 教育学部, 助教授 (10211781)
山本 真鳥 法政大学, 経済学部, 教授 (20174815)
清水 昭俊 国立民族学博物館, 第4研究部, 教授 (30009758)
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キーワード | 海外移住 / 近代化 / 送金 / 若年労働力の流出 / 生業経済の停滞 / 社会・文化変化 / 伝統儀礼の活性化 / 自前の国家建設 |
研究概要 |
オセアニア島嶮国は産業基盤が未整備のため、MIRAB経済ないし社会と性格づけられている。これは、海外移住(migration)による送金(remittahces)と海外援助(overseas aid)によって国民生活と国家財政をまかない、植民地時代に受容した官僚制(bureucracy)によって国家を運営していることをさしている。本年度は、このような社会・経済的状況にある国々のうち、ミクロネシアの3か国、ポリネシアの4か国を対象に移住についての調査を実施した。その結果、明らかになったことは以下のとおりである。 1)移住時期と動向:1970年代から鳥嶮国からの移住が急増する。これは先進国の経済発展と関連し、クックと米領サモアは旧統治国(ニュージーランド、米国)へそれぞれ国民人口の2倍、西サモアとトンガはその3割を米国、ニュージーランド、オーストリアへ、パラオもその3割を米国に移住させている。2)移住の動機と生活:家庭生活の近代化や子女の教育、人口増と土地や職場不足などが主な理由である。移住人は単純労働に従事し、収入も限られ厳しい生活を強いられいる。3)送金:トンガ、西サモア、クックの移住者からの総金額は国内総生産の5割以上を占める。送金は輸入食料品、テレビ、車の購入、家屋の新築・改善などの消費経済に向けられる。また、伝統的な儀礼・祭宴の盛大化、教会の行事・寄付の増大という、威信経済にも投入される。送金は家計および国家権済の自立化のための事業や産業に投資されない。4)問題点:高学歴者や若年労働者の流失による生業経済の停滞と消費経済への依存、高齢者や離婚・母子家庭の増大など伝統的家族の崩壊をもたらすと同時に、移住先国の経済不況や移住政策の変更などによる不法滞在者の強制送還などで、母国への還流者による国内での暴力的事件の頻発など大きな社会問題を引き起こしている。
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