研究分担者 |
IVAN Roa テムコ病院, ラ・フロンテラ大学, 部長 教授
IVAN Serra チリ大学, 医学部, 教授
ALFONSO Calv ソテロ, デル・リオ病院, 部長
菅沼 雅美 国立がんセンター, がん予防研究部, 研究員 (20196695)
田島 和雄 愛知県がんセンター, 疫学部, 部長 (30150212)
山本 正治 新潟大学, 医学部, 教授 (40018693)
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研究概要 |
病理学的研究:胆道癌外科材料中、胆嚢癌はチリで7.1%(40/560,Santiago)で、早期胆嚢癌は3.3%(17/503,Santiago)、16.6%(60/362,Temuco)で、新潟例33.8%(161/476)より有意に低率であった。これは術前診断能や術後の肉眼診断能に起因することが大きいと考えられる。しかしこのほかに、両国間で胆嚢癌そのものの性質が異なるのかどうか、宿主側の因子が異なるのかどうかを解析する必要があろう。 一方、進行胆嚢腺癌の組織型を両国間で比較すると、低分化型腺癌の頻度はチリで25〜29%、日本で8%であった。急性胆嚢炎合併胆嚢癌はチリの早期癌で20〜25%(日本3%)、進行癌で45〜50%(日本11%)と高かった。また、チリの胆嚢癌は表面がIIb様に平坦で、びまん浸潤型の癌の率が高かった。 p53遺伝子異常の指標であるp53蛋白過剰発現(p53 staining patternが(++)と(+++)のもの)は、早期癌、進行癌を問わず、チリ胆嚢癌で有意に低かった(Temuco例進行癌を53%を除く)(Tables)。しかし、同一国では蛋白過剰発現率は癌の大きさ、進行度および組織型に無関係であった(Tables)。これらの成績から、日本人の胆嚢癌は70%近くがp53変異で発生することがわかる。p53変異がどのexonにあるのか、どのような塩基異常か、さらに分析する必要があろう。一方、チリ人の胆嚢癌は早期癌で約30%,進行癌で約50%(両者間で有意差なし)がp53変異で発生している。その他の遺伝子変異が何かも大きな課題といえよう。 疫学・生化学的研究:胆石症例の胆汁にAmesテストを行うと、突然変異原性がチリ胆汁の68%(女性13/18で72%,男性0/1)、胆嚢癌高発生地の新潟で58%(女性9/11で82%,男性5/13で39%)、低発生地の高知で10%(女性2/11で18%,男性0/9)であった。チリ胆嚢癌発生の危険因子を探るため、1:2の患者-対照研究を行った。患者と性・年齢をマッチさせた対照(胆石がある者とない者)を各々1名ずつ割り当て、1:2のマッチングを行った。61組183人を分析対象とした。教育年数は対照者で有意に長く、ラ-ドや油脂類(オリーブ油)の摂取や緑色・赤色の唐辛子の摂取が対照者で有意に高かった。 まとめ p53蛋白質過剰発現率の差、摂取物の差や胆汁の高い突然変異原性から、チリと日本の胆嚢癌発生にはmutagensやcarcinogensの質が異なっていることが推測される。これらを分析すると共に、その差に基づく癌の遺伝子変異の差や前癌病変とその遺伝子変異を分析する必要があろう。
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