研究課題
国際学術研究
1.研究目的1)ロサンゼルス在住の日系人、白人の食習慣を中心とした生活習慣、および2)血清性ホルモン値、ペプシノゲン値、カロテノイド値等を調査し、両群間におけるこれらの差とがん罹患パターンの差の関連性について分析することが、本研究の目的である。あわせて、3)血清中のこれら個人別測定値と個人の食習慣との関連性を明らかにしようとした。日本の日本人の調査については、文部省科研費がん特(1)の補助を受けて、別に調査研究中である。2.研究対象と方法ロサンゼルス郡運転免許証所有者名簿から無作為に抽出した40歳以上の日系人男女各50名、同白人男女各50名を対象に、郵送・自記式の調査票を用いて、食生活を中心とした生活習慣の調査を企画した。後日、保健婦が被調査者を訪問して静脈血を採取し、血清分離後-80℃で凍結保存し、一括してドライアイス梱包の上日本へ空輸した。血清中の各種成分の分析は、日本側研究者が担当した。3.研究成果日系米人男子48名、女子51名、白人男子48名、女子52名から血液を採取することができた。次に、これまでに分析の済んだ血清中の成分値を示す(すべて数値は白人を1.0とした場合の日系米人の値):βカロテンは男で1.45倍、女で1.27倍、αカロテンは男1.56倍、女1.70倍、リコペンは男1.36倍、女1.23倍、クリプトキサンチンは男1.56倍、女1.64倍、ゼアキサンチン/ルテインは男1.36倍、1.31倍、レチノールは男0.89倍、女0.93倍、αトコフェロールは男1.02倍、女1.07倍であった。しかし、生活習慣調査の情報の入手が遅れており、これらの値についての喫煙習慣等による補正ができていない。血清中のペプシノゲンIおよびペプシノゲンIとIIの比から推定した年齢補正済みの慢性萎縮性胃炎の白人対日系米人の推定割合の比は男で1:1.37、女で1:1.27であった。ちなみにロサンゼルスでの胃がん罹患率(1983-87)の白人対日系人の比は男で1:4.0、女で1:4.2であった。昨年度報告したパイロット調査から得られた各種栄養素と主な食品摂取量の日系米人と白人の差につき、本年度は年齢補正を加えたが、結果に大差はなかった。すなわち、日系米人は白人に比べ飽和脂肪の摂取量、繊維の摂取量ともに少なく(前者は男で77%、女で87%、後者は男で81%、女で91%)、またカルシウムの摂取量も少なかった(男で68%、女で76%)。本調査の対象者の個人別摂取量の分析が米国側の都合で遅れており、現在米国側研究者と今後の分析について協議中である。4.付記国際学術研究がん特別調査の補助を受けての本研究は平成5年度で終了するが、血清の空輸の遅れなどのため分析が予定通り進んでおらず未完成な部分がある。今後、何らかの方法で研究を継続し、できるだけ早い時期に報告書を作成したい。また、米国移民の母国集団としての日本の日本人の調査も文部省の科研費の助成を受けて継続中であり、本研究の結果と対比することにより、移民集団を対象とした成因追求のための記述疫学を強固なものにしたい。
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