研究分担者 |
徐 葵 中国社会科学院, ソ連東欧研究所, 嘱託
JUKES Geoffr オーストラリア国立大学, 高等研究所, 上級研究員
ROTFELD Adam スエーデン, ストックホルム国際平和科学研, 所長
河 龍出 韓国ソウル国立大学, 政治外交学部, 教授
TSIPKO Aleks ロシア, ゴルバチョフ基金, 政治学部長
BOGATUROV Al ロシア科学アカデミー, 米国カナダ研, 部長
西村 可明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (60017671)
長谷 川毅 米国カリフォルニア大学サンタ, バーバラ分校, 教授 (50164819)
SENGHAAS Die ドイツ, ブレーメン大学・政治学部, 教授
STANISZKIS J ポーランド, 科学アカデミー政治学研究所, 教授
田中 明彦 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (30163497)
塩川 伸明 東京大学, 法学部, 教授 (70126077)
木村 汎 国際日本文化研究センター, 教授 (80001767)
松里 公孝 北海道大学, スラブ研究センター, 助教授 (20240640)
田畑 伸一郎 北海道大学, スラブ研究センター, 助教授 (10183071)
山村 理人 北海道大学, スラブ研究センター, 助教授 (60201844)
家田 修 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (20184369)
望月 哲男 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90166330)
原 暉之 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90086231)
皆川 修吾 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (60121472)
STANISZKIS Jadwiga INSTITUTE OF POLITICAL SCIENCE
HA Yong-chool SEOUL NATIONAL UNIVERSITY
JUKES Geoffrey j.t. AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY
BOGATUROV Aleksei d. INSTITUTE OF THE USA AND CANADA
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研究概要 |
研究計画は最終年度である3年目を迎えたので、調査研究を継続しながらも、全体の研究成果を総括する活動に精力を注いだ。昨年度は派遣事業よりも招聘事業を中心としたが、今年度は派遣事業により重点をおいた。研究代表者伊東孝之はロシア、チェコ、ドイツで安全保障面での旧ソ連東欧諸国の国際統合の動向を調査した。ウクライナでも調査を行う予定だったが、同国の治安状態に不安が生じたので断念し、その代わりにモスクワでウクライナの国際統合の動態について情報を収集した。当初の予定ではポーランドでも調査を行う予定だったが、同国についてはわが国でも情報が豊かなので、近年とみに西側諸国への急接近を試みているチェコで調査を行った。また、旧ソ連東欧諸国に対して吸引力を強めているドイツにおいても調査を行った。 経済面での国際統合については、本来研究分担者西村可明が行う予定だったが、本務が多忙のため研究分担者家田修が代行した。家田はロシアとハンガリーでそれぞれ聞き取り調査、資料調査を行った。経済学と政治学に通じ、英語とハンガリー語に通じる家田はこの役割に正に適任であった。歴史意識、文化思想面の調査は研究分担者原暉之がロシアで行う予定だったが、健康を害したため、研究分担者望月哲男が代行した。望月は専門のロシア文学だけではなく現代ロシアの思想動向にも通じており、調査者としてきわめて適任であった。 招聘事業に関しては、本年度が最終年度であることを鑑み、相手側研究代表者A.S.ツィプコを招聘し、二度のワークショップを開いた。さらに相手側研究分担者D・ゼングハ-スを招聘する予定だったが、健康を害して来日することができなかったので、相手側研究分担者A・D・ボガトゥーロフを招聘した。ボガトゥーロフは相手側研究チームの事務局担当であり、かつ日露関係の専門家でもあるので、その招聘は時宜を得たものだった。 以上のほかに、若干の相手側研究分担者が独自の財源で来日し、日本側の研究分担者と研究成果を交換している。それは米国カリフォルニア大学の長谷川毅(94年6月〜95年3月)、オーストラリア国立大学のG・ジュークス(94年11月〜12月)、韓国ソウル国立大学の河龍出(95年1〜2月)の3氏である。また、多くの日本側研究分担者が本研究計画の予算外で現地調査を行っているが、いちいち枚挙しない。こうしたことは共同研究に対する研究分担者の熱意を証明するものといってよいだろう。このように研究分担者間の交流はきわめて濃密である。主として札幌で毎月のように研究会を開き、また94年7月と95年1月には大規模なシンポジウムを開催した。 他方、研究成果の刊行も進んでいる。カレントな研究成果は逐次スラブ研究センター研究報告シリーズにおいて発表しているが、集大成としては次の2著がある。Takayuki Ito & Shinichiro Tabata,eds.,Between Disintegration and Reintegration.Former Socialist Countries and the World since 1989,Sapporo:Slavic Research Center,1994,pp.444;伊東孝之・木村汎・林忠行編『スラブ地域の国際関係』弘文堂1995年4月刊行予定。 本研究によって得られた知見のうち、若干の例を挙げれば、(1)統合の過程と分解の過程が併行して進んでいる。CIS諸国の再統合が進んでいるといわれるが、それと併行して分解も一層深化している。旧ソ連東欧諸国間の結びつきも急速に解体しつつある。しかし、他方でこれら諸国が西欧中心の経済と安全保障の磁場に吸引される過程が観察でき、その中でこれら諸国間の関係も再編成されつつある。(2)国内プロセスと国際プロセスが複雑に絡み合っている。どの国の外交政策論争も優れて国内問題である。今日の不安定な政治状況を念頭におくならば、外交政策の急転換も十分にあり得る。また、国内の経済改革の方向、その進展度が国際統合に大きな影響を及ぼす。(3)国内プロセスは政治、経済だけではなく、歴史意識、文化、思想などのプロセスでもある。どの国でも19世紀ロシアに起きたスラブ派と西欧派の論争を彷彿とさせる論争が起きている。この論争の帰結も外交政策の志向に大きく影響するだろう。大きく見て冷戦後の欧州には、西欧を中核地域とし、北、東、南の隣接諸国を辺境地域とする一種の華夷秩序が形成されつつある。旧ソ連東欧諸国はこの新しい世界秩序に参入するか、それともそれを拒否して独自の世界秩序を構築するかという選択肢の前に立たされている。
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