研究分担者 |
CONARD Jack 微粒子研究所, 主任研究員
DESARMOT Geo 宇宙研究所, 主任研究員
ERRE Rene オルレアン大学, 教授
OBERLIN Agne マルセル, マシュー研究所, 名誉所長
BONNAMY Sylv 微粒子研究所, 主任研究員
遠藤 守信 信州大学, 工学部, 教授 (10021015)
逆井 基次 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50124730)
吉田 明 武蔵工業大学, 講師 (70257103)
菱山 幸宥 武蔵工業大学, 教授 (90061499)
田辺 靖博 東京工業大学, 工業材料研究所, 助教授 (70163607)
安田 榮一 東京工業大学, 工業材料研究所, 教授 (70016830)
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研究概要 |
ピッチ中での基本炭素骨格の形成および成長,すなわち違方性構造(メソフェーズ)の形成および成長,についてポリイミドフィルムおよび気相成長炭素繊維中での炭素骨格の形成および成長と比較して検討した.本研究で選ばれたこれら3つの試料は,ピッチは液相を経由して炭素化し,液相中で基本炭素骨格が形成されるのに対して,ポリイミドは固相で炭素化する代表的な前駆体であり,また気相成長炭素繊維は気相炭素化によって生成することから,それそれが3つの炭素化プロセスを代表する炭素材料である.さらに,これらの基本炭素骨格の成長の結果として生じる炭素材料の構造と組織を議論するとともに,炭素科学と工学におけるそれらの重要性について議論した. 1.液相ピッチ中での基本炭素骨格の形成と成長 基本炭素骨格の形成と成長は試料ピッチの化学組成とその熱覆歴に依存している.熱処理にともなう炭素骨格の形成過程から,試料として採用したピッチは2つに大別できた.その一つのグループはミクロンオーダーでの不均質性を持っており,Brooks-Taylor型のメソフェーズ球晶を含む等方性の相と,基本構造単位(炭素六角網平面)がエッジ同志で会合し広い範囲に配向した異方性の相とから成っている.これに対して,他のピッチのグループは,広範囲に配向した異方性相のみから成り,均質であった. 2.炭素骨格の成長による構造の形成 異方性構造が発達したいわゆるメソフェーズピッチについて,その異方性構造骨格がどのように炭素繊維中に引き継がれていき,いわゆるメソフェーズピッチ系炭素繊維の構造と組織を形成するかについて透過電子顕微鏡および偏光顕微鏡によって観察した.さらに,これらの組織が明確にキャラクタライズされた炭素繊維の中での炭素六角網面の発達状況および配列状況をX線開折および磁気抵抗測定に依って明らかにした.メソフェーズピッチ中に生成した等方性の部分と,炭素六角網平面のエッヂ同志で会合した異方性の部分,およびBrooks-Taylor型のメソフェーズ球晶がスピニング後のピッチ繊維の組織にも引き継がれ,たとえば,エッヂ同志で会合した異方性部分を大量に含むピッチからはラジアル型の組織を持つピッチ繊維が得られ,その組織が不融化,炭素化,さらに黒鉛化処理の過程まで保たれている.そして,繊維軸方向には長く延びた炭素六角網面を生成する.これに対して,ポリイミドフィルムの場合も,前駆体での分子の配向が炭素化・黒鉛化後の構造に支配的な影響を持つことが明らかとなった. 3.炭素材料の組織と機能との関係 メソフェーズピッチ系炭素繊維の組織は,気相成長系炭素繊維の年輪状組織を含めて,繊維の各種の機能の発現に大きく関わっている.たとえば,高温処理による黒鉛構造の発達はこの組織に大きく左右され,切り欠きを持つラヂアル型組織を持つ炭素繊維が最も高い黒鉛化度を持つことを,高温処理試料のX線パラメーターおよび磁気抵抗測定によって示した.メソフェーズピッチ系炭素繊維の場合は非常に広い範囲の組織を取ることが可能であり,それに機能および用途の多様性が由来していることを示すことができた. メソフェーズピッチ系炭素繊維とポリマーとの濡れ,およびその構造中への硫酸およびリチウムのインターカレーション挙動を検討し,その組織が大きな影響を持つことを示した.
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