研究課題
国際学術研究
1.研究の目的・方法:広域都市圏の地震防災の出発点は都市域内の揺れの強さの分布を、広域、高密度、かつ高精度に事前に把握することである。従来よりの深層ボーリング・弾性波探査等の大がかりな方法に替わる実効性の高い長周期微動を利用した方法がある。この方法は簡便で多点調査を容易に実行できる反面、その結果から地震時の地盤増幅度特性の解釈に高度の専門性を要求するため、調査法の一般化・普及性を展開しにくい側面を残していた。本研究は上記の点に着目し、微動観測・処理・解釈に至る部分の一般化を目指して、2ヶ年計画で調査研究を実施した。フィールドを広域都市圏でかつ地震危険度の高い米国・ロサンゼルスと本研究グループの研究の蓄積のある札幌都市圏にとり現地観測を通じて研究を進めた。2.平成4年度:初年度はロサンゼルス都市圏における微動観測を中心に次の項目について研究を進めた。(1)文献調査:ロサンゼルスは深さ数Kmに及ぶ堆積盆地上に立地しており、1971年サンフェルナンド地震、1987年ウイッティア地震の際多数の強震記録が得られ、長周期の卓越が地盤構造との関係で議論されているので、それらの文献調査を実施した。(2)微動観測:70Km四方の範囲を対象として微動の観測を150点で行った。ラップトップ計算機に内蔵した12bitA/Dを介して直接ディジタル収録する方式をとった。観測は、3観測班によって移動観測を行ない、その間岩盤サイトの固定観測点では1時間ごとに連続観測を行なった。観測期間は8月4日〜10日の7日間である。(3)地震観測:同じシステムによる地震観測も行なった。観測は岩盤上の固定点(REF)と堆積地盤上の南加大学(USC)の構内の2ヵ所で微動の連続観測と併せ12日〜19日に行なった。この期間2組の地震記録を得ることができた。地盤上(USC)では継続時間も長く長周期が卓越しておりスペクトルで数倍の違いがみられた。(4)微動記録の解析:観測記録のスペクトル解析を行った。比較観測点を北端の岩盤サイト(REF)に設け連続観測を行っているので、この点のスペクトルを分母に各点のスペクトル比を求めた。さらに、周期帯域別にスペクトル比の幾何平均を求めた。さらに周期別に振幅比を地図上にプロットしコンタ表示した。このようにして求めた「岩盤サイトに対する微動のスペクトル比のコンタマップ」は地盤の増幅特性を表すものと解釈でき、微動観測の有効な工学的利用方法であると考えられる。3.平成5年度:前年度のロサンゼルスにおける観測結果の解析を進め、地震入力評価法の確立のため微動の現場観測法から解析、評価に至るプロセスの一般化を図った。これを進めるため、米国の分担者1名を招へいし、札幌都市圏における微動の補助的な観測を実施するとともに評価法確立のための議論を行った。(1)ロサンゼルス都市圏をモデルとした地震入力評価:前年度の初期モデルを出発点とし微動による結果で内外挿し、浅層〜深層地盤の3次元構造を求めた。さらに、これをもとに高密度の地震入力評価を具体的に行った。(2)微動計測法の確立:前年度の観測で指摘された野外観測の問題点を含め、観測計画の立案から実施に至る一連のプロセスのシステム化を図る目的で札幌および近郊において補助的な観測を実施した。観測は8月12日〜15日に札幌都市圏を横断、縦断する4測線で実施し、現場観測法の問題点の改善を図った。また、得られた結果を既往の調査結果と比較する事で解析上の問題点の改善、解析方法の一般化を図った。(3)入力評価法の確立:地震入力評価の手順を再整理し、これまでの成果も併せ、一般化を図り、最終的に汎用性の高い入力評価法の提案を行った。
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