研究分担者 |
AGREN J. 王立工科大学(スウェーデン), 金属系, 教授
INDEN G. マックスプランク研究所(ドイツ), 鉄鋼研究所, 教授
SAUNDERS N.J (株)サーモテク, (連合王国), 代表
MIODOWNIK A. サレー大学(連合王国), 材料系, 教授
大沼 郁雄 東北大学, 工学部, 助手 (20250714)
貝沼 亮介 東北大学, 工学部, 助手 (20202004)
大谷 博司 東北大学, 工学部, 助手 (70176923)
OHTANI H. FACULTY OF ENGINEERING,TOHOKU NIVERSITY
KAINUMA R. FACULTY OF ENGINEERING,TOHOKU NIVERSITY
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研究概要 |
実用に供されているNi基超耐熱合金は、Ni-Al-Ti系を基本合金とし、γ(Ni固溶体:A2)相のマトリックスにγ'(Ni_3Al:L1_2)相が微細に分散した組織から成り立っている。一方、この系には、β(NiAl:B2)相とβ'(Ni_2TiAl:L2_1)相が存在し、優れた耐酸化性とクリープ特性を有する事が知られてあるが、極めて脆いために実用化を推進するための最大の弱点となっていた。近年、本研究グループは、Ni-Al基系において、単相では脆いβ相に少量のγ相を混在させることにより、β基合金の延性が改善されることを見いだした。本研究では、これらの手法をさらに発展させ、β相以外にβ'相やγ'相をも含めたNi-Al-Ti基系の多相合金について、新しい高温材料としての可能性を検討し、適正な組成範囲を決定することを目的とする。3年間の研究期間で得られた結果は、以下に示す通りである。 1、Ni-Al基合金の相平衡の研究 (1)相平衡に関する実験:Ni-Al-Ti系、Ni-Al-Co系及びNi-Al-Fe系におけるγ、γ'、β、β'、η(Ni_3Ti:DO_<24>)相間の平衡を主に拡散対法によって決定した。また、Ni-Ti-Al系に合金元素X(X:Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Nb,Mo,Ta,W,Si)を添加し、γ、γ'、β、β'、η相へのXの分配挙動を調査し、各相の相安定性に対する影響を明かにした。 (2)相平衡の熱力学的解析:以上の実験結果に基づき、Ni-Al系、Ni-Ti系、Ni-Al-Ti系、Ni-Al-Fe系について熱力学的解析を行い、Al量が50%以下の領域で相平衡を精度良く推定する事が出来るようになった。 2、組織制御に関する研究 Ni-Al-Fe係やNi-Al-Co系など、β相がマルテンサイト変態をおこす合金では、マルテンサイト相を利用することによって様々な組織形態を形成させる事ができた。例えば、この方法によって得られる極めて微細のβ+γ'2相ラメラ-組織は、優れた機械的性質を有し、しかも、そのラメラ-組織は800℃程度の高温域でも安定であることがわかった。Ni-Al-Cr系では、Crを数%以上添加するとβ相中にCrリッチの不規則bccα相が析出するが、このα相はβ相と整合性が良いために高温強度の増加に有用であることがわかった。 3、機械的性質及び組織との関連 (1)γ+β2相合金:数%のγ相の存在で機械的性質が劇的に改善された。しかし、600℃以上の温度では、急激な強度の低下が見られた。Ni-(20-28)Al-Fe合金においては、極めて優れた耐酸化性が観測された。 (2)γ'+β2相合金:計算状態図の情報により、1200℃付近の熱間加工温度ではγ+βとし、1100℃以下ではγ'+βとなるような合金を作製した。この合金は、γ+βの場合に比して高温強度の向上が見られた。 (3)γ'+β+β'3相合金:Ni-(15-25)Al-(7-15)Ti合金をベースに種々の合金元素を添加し、高温強度、室温延性、組織観察を行った結果、約700℃近傍までは、現用のNi基超耐熱合金以上の高温強度を有するが、それ以上の温度では、強度が低下する事がわかった。靱性もγ'+βやγ+β合金に比べると、まだ十分ではない。 4、まとめ 本研究で調査した、β+γ合金及びβ+β'合金は、約800℃程度の温度以下では、現用のNi基超耐熱合金よりも耐酸化性、高温強度に優れていることがわかった。しかし、それ以上の温度では、β相やβ'相のBCC相特有の高温強度の低下が生じるので、γ'をさらに利用する事が必要である。靱延性も考慮するとγ+γ'+β+β'の組織が有望であり、今後さらに研究を進めて行くことになった。なお、本研究で開発したβ+γ合金、及びβ+γ'合金は、従来にない極めて優れた耐酸化性と靱性を有しており、Ni基超耐熱合金の表面コーティング材への適用を始め、耐高温腐食や耐高温酸化性が要求される用途に期待できる。
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