研究概要 |
ニワトリを材料としてこれまで分子レベルの研究が殆ど行われていないZ,W性染色体の構築と遺伝子機能の解析を進めている。本共同研究のねらいは研究代表者(水野)の研究室でZ,W染色体の遺伝子クローニングを行ない、アメリカの研究分担者(N.ハッチソン)の指導のもとに卵母細胞から減数分裂前期のランプブラッシ染色体標本を多数作製し、研究代表者と分担者が共同して蛍光in situハイブリダイゼーションによる染色体上の遺伝子マッピングを行なうことである。ランプブラッシ染色体は最も伸長した染色体構造であるので正確なマッピングが行える利点をもつほか、Z,W染色体間の対合や転写活性部位である染色体ループや転写不活性部位であるクロモメアを識別できる生物学的に興味深い対象である。本年度は9月に研究代表者と研究協力者の小川 晃がシアトルのハッチソン研究室に行き、約200枚のよい染色体標本を作製した。これらの標本にハイブリダイゼーションを行なうことにより、Z染色体の長腕、短腕部にそれぞれ含まれるIREBP,ZOV3の2種の遺伝子の局在部位を決めることが出来た。これらは今後Z染色体上の遺伝子マッピングを行なう際のよいランドマークとなる。また、Z染色体端部のヘテロクロマチンに対応するゲノムクローンも得られた。W染色体については、末端の非反復配列ドメインの遺伝子クローニングを目指しているが、これまでに約25kbずつの2ヶ所のゲノムクローンが得られ、ランプブラッシ染色体上でそれぞれ異なる局在部位が確定された。一方、鳥類のランプブラッシ染色体のループ、クロモメアの微細形態の研究がイギリスのH.C.マグレガ-、ロシアのI.ソロベイの両グループの共同研究で進められており、本研究との交流が強く望まれる。水野は9月にシアトルからイギリスのレスター大学にまわり、マグレガ-教授と研究状況、今後の共同研究方策について協議した。
|