研究課題
新規パッチクランプ法であるニスタチン法を急性単離したラット中枢神経細胞に適用して、1、電位依存性カルシウム電流(I_<Ca>)に関し以下の4点を明らかにした。1)ニスタチン法によりI_<Ca>をランダウンさせることなく長時間記録することに成功し、以下の解析が可能になった。2)海馬CA1領域および視床下部(VMH核)の神経細胞においてI_<Ca>の特異的阻害剤であるω-conotoxin、ω-agatoxin、nicardipineを用いることにより、高閾値型I_<Ca>を薬理学的にN型、P型、L型、R型に分類した。3)CA1の錐体細胞ではN型、P型、L型、R型I_<Ca>がそれぞれ56、22、5、18%を占めた。神経伝達物質であるソマトスタチンは百日咳毒素(PTX)-感受性G蛋白質を介してN型I_<Ca>を選択的に抑制した。4)VMH核の神経細胞では、N型、P型、L型、R型I_<Ca>がそれぞれ35、30、26、9%を占めた。セロトニン(5-HT)が5-HT_<1A>受容体ならびにPTX-感受性G蛋白質を介してI_<Ca>を抑制したが、N型、P型、L型I_<Ca>への抑制効果が大きく、選択性は低かった。2、また細胞内カルシウムイオン(Ca^<2+>_i)に関して次の2点を明らかにした。1)テオフィリンが、細胞内Ca^<2+>ストアからCa^<2+>遊離を促進することにより3種類のK^+チャネルを制御し、3相性の応答を惹起した。2)甲状腺刺激ホルモン遊離ホルモン(TRH)が、イノシトール3リン酸受容体を介して細胞内Ca^<2+>ストアからの遊離を促進することにより、Ca^<2+>依存性K^+チャネルを活性化した。この応答にはCキナーゼの活性化が不可欠であった。平成6年度は、I_<Ca>の特性や、I_<Ca>と神経伝達物質間の相互作用に関する研究をさらに広く展開し、中枢神経系におけるカルシウムイオンの役割を統合的に解明したい。