研究概要 |
1.三次元画像解析法の開発 (1)試料作製 骨格筋細胞横細菅系の三次元画像解析のため、資料の作製から始めた。カエル骨格筋を材料として、ゴルジ銀法により横細菅系を選択的に染色した。その染色法では、全ての筋細胞が同じように染色されるわけではなく、横細菅系が選択的に染色される細胞のほかに、筋小胞体が染まった細胞、膜系が全く染まらない細胞も混在していた。興味深いことに、このような膜系の染色性の違う筋細胞が光学顕微鏡下で区別できることが明らかになった。すなわち、横細菅のみが染まった細胞は反射光下でわずかに黄色調で透明に見え、筋小胞体が染まった細胞は赤褐色を呈し、全く染まっていない細胞は黒色を呈した。このような資料から1〜3μmの厚い切片を作製、中高圧電子顕微鏡にて立体対写真を撮影した。これにより、当初の計画通り、三次元画像解析のための立体電子顕微鏡写真を準備できた。 (2)三次元画像解析 撮影された立体対写真について、米国の共同研究者の研究室でコンピューターを用いて、三次元画像解析法の開発を進め、そのためのプログラムを作成し、応用を開始した。基本的には、異なる試料傾斜の電子顕微鏡像をまず数値化し、これをコンピューター・ワークステーションのディスプレイ上に立体対として映し出し、立体眼鏡で立体視しながら、染まった横細菅のみを選び、その走行をたどることによって、コンピューターグラフィック・モデルを作ることを行なった。さらにこれを立体的にトレースすることによって定量化を計るものである。この方向で、現在もプログラムの開発・改良を進めている。 (3)反射共焦点レーザー顕微鏡による立体観察 金属染色した試料は共焦点レーザー顕微鏡の反射モードの観察対象になることが期待されたので、ゴルジ銀法で横細菅系を選択的に染色した筋細胞を、樹脂包埋ののち、厚いスライスのまま反射モードで観察した。その結果、予想通り、横細菅系はレーザー光をよく反射し、鮮明な像として観察することに成功した。共焦点レーザー顕微鏡にて光学的(断層)連続切片を得て、これからコピュータ-による三次元再構築もできた。横細菅の分布を広く立体的にたどることができ、筋原線維のZ板レベルを横走する王再関係の網工平面がラセン配列をとっていることが明らかになった。 光顕・電顕相関法の開発 ニワトリ胚心筋細胞を用いて、筋原線維形成過程を光顕・電顕とを相関させる方法の開発を試みた。金製グリッドに支持膜を張り、その上に心筋細胞を培養し、筋原線維成分について、アクチン、α-アクチニン、ミオシン、またビンキュリンなどを蛍光抗体染色し、共焦点レーザー顕微鏡で光学的連続切片観察を行なった。次に、同じ試料を電子顕微鏡用に固定、脱水、臨界点乾燥し、全載標本として、中高圧電子顕微鏡にて立体的に観察した。両像を立体的に対比することによって、同一試料について点対点で対応、相関させることができた。現在、膜オルガネラについても、DiOC_6,DiIなどの蛍光色素で染色し、同様に、共焦点レーザー顕微鏡と電子顕微鏡とを用い相関させることも試みた。 組織切片についても、光顕・電顕相関法を考案した。型のごとく、骨格筋組織からクライオスタット切片を作り、抗ジストロフィン抗体で染色し、共焦点レーザー顕微鏡で光学的連続切片を作り、観察したのち、電子顕微鏡用に固定、脱水、樹脂包埋して、電子顕微鏡観察し、相当するレベルで両像を相関させることができた。
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