材料設計のための国際的に分散したデータベースおよび知識ベースの統合化

1994 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 04044049
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 岩田 修一 東京大学, 人口物工学研究センター, 教授 (50124665)
• 研究分担者: KISELYOVA N. ロシア, バイコフ国立治金研究所, 主任研究員 ; DELI Heng 中国, 清華大学材料研究所, 所長 ; RABE K. 米国, エール大学応用物理, 教授 ; CHELIKOESKY ジェー. 米国, ミネソタ大学スーパーコンピュータ研究所, 教授 ; PETTIFOR D.G 英国, オックフォード大学, 教授 ; MCCARTHY J. 米国, ローレンスバークレイ研究所, 主任研究員 ; VILLARS P. スイス, ビラス金属間化合物, 代表研究員 ; RODGERS J.R. カナダ, 科学技術情報研究所, 主任研究員 ; 関村 直人 東京大学, 工学部, 助教授 (10183055) ; LI Heng-de Inst.of Materials Sci.and Eng., Tsinghua Univ.Beijing.China.Head.
• 研究期間 (年度): 1992 – 1994
• キーワード: 材料設計 / データベース / 知識べ-ス / 計算機ネットワーク / 統合システム / ブリウジンクツール

研究概要

平成6年度は3年間の活動の集約として計算機ネットワークを活用した国内からの材料データシステム、知識ベース統合実験、国外からの同統合実験のデモンストレーション、研究打ち合わせを行った他、今後の研究協力の継続を企図して国際ワークショップを国内で1度開催した。内容的には、近年の極めて急激な計算機ネットワークの充実を背景にしたデータ、知識の共有とその材料設計への展開を目標に、材料設計システムの構築に関連した構造予測・特性予測・システム化の現状と展望等といった総合的な討論と計算手順・計算機資源の共用等といった個別的・具体的な検討を行った。
カナダ国立研のJ.Rodgersとは、双方の計算機環境についての情報交換を行い、利用可能な計算機化された情報資源を基台にした材料設計環境(ワークベンチ)としての"材料設計のためのバーチャルラボラトリ-"の基本仕様の検討を行った。基幹システムとしては、第一原理計算ライブラリー、バルク材料の電子状態予測のための元素基礎情報、結晶構造データベース、ポテンシャルデータベース、ミクロ組織データベース、材料諸特性データシステム等を選定して、分野別の個々のデータ検索・推算・利用を越えて、因果関係にそって関連情報を接続できるような連続した材料設計手順の実行を可能とする枠組を検討し、材料設計用インターフェイスの仕様を定め、材料設計手順例を作成した。
材料設計システム内で構造・特性等の予測を行う計算手法についての検討では、D.G.Pettiforにより、Bond orderポテンシャルを用い構造特性等を詳細に求める手法が示され、分子動力学計算と電子論との境界領域についてのデータベース、知識ベースの統合についての考え方が示された他、オックスフォード大学で本研究とは独立したプロジェクトとして進行中のMML(Materials Modeling Laboratory)との研究協力の可能性について、システムのセキュリティーも含めた議論を行い、当面は双方で公開しているWWWサーバー上でのリンクに止め、本格的な統合については具体的な計画の共同作成を通して考えることにした。
国際的に分散したデータベース・知識ベースの統合化に対する検討は、J.McCarthyとの意見交換により、計算機ネットワークを利用し、"MOSAIC"等を用いた材料設計情報の国際的・効果的な共有・利用を行ったが、入手可能なデータの質の評価に関してはデータ表現のような形式に関するものからデータの意味に至る様々な視点からの検討が必要となるため、生命科学分野で構築されたACEDBを参考にして材料データ用のブラウザ-の設計開発を行った。ブラウジングの視点としては、構造、時間、モデル、表現等が必要となるが、実体としての材料の記述とその表現、分類、材料設計用の規則性・知見の導出のためには、構造と時間に関するブラウザ-が重要であることから、そのプロトタイプの開発を行った。時間に関しては、絶対時間、相対時間、前後関係等の方向性と因果関係、時点と期間、名称などのテキストの表現等を統一的に取り扱う必要があり、その一部を実現した。構造情報に関しては、基本構造パターンライブラリーを準備し、構造マッチングによる構造間の類似性、差異性の記述に着目したブラウザ-の仕様の検討を行った。高温、照射、応力、化学環境による構造変化は、材料評価にとって極めて重要な情報である。そうした時間展開をする深い階層性のある構造情報の取扱いに関しては、観測・計算モデルに依存した分解能、全体-部分関係、境界・界面のダイナミックスと部品展開、入手情報のデータ表現の解釈等の項目について検討する必要があり、構造マッチング後の課題についての検討についてもあわせて行った。
以上、本研究では材料設計を目的に国内外のデータベース、知識ベースの統合実験を行ったが、今後の本格的なネットワーク利用の時代においては重要な情報の抽出と利用にあたっては設計課題に解決に適した良質の情報の選定が極めて重要であり、そのための枠組み(=情報環境)としてのブラウザ-の試作と評価体系の整備への課題抽出を行った。

研究成果

• [文献書誌] J.Liu, S.Iwata: "Structural propeties of the endohedral complex Na^+C_<60>" J.Phys.,Condens Matter (U.K.). 6. L253-L258 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 陳迎,岩田修一、劉晶南、P.Villars: "材料設計のための構造的な要因の抽出(I)" 東京大学工学部紀要<A>年報. 第32号. 54-55 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Jing-Nan Liu, S.Iwata: "Structural properties of the endohedral complex Na^+@C_<60>" J.Phys., Condens Matter. (U.K.). 6. L253-L258 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.Chen, S.Iwata, J.Liu., P.Villars: "Articulation of Structural Primitives for Materials Design (I)" J.of the Faculty of Eng., the Univ.of Tokyo. (Jpn) series A.32. 54-55 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より