研究概要 |
平成5年度中に行われた研究成果は以下の4項目に要約することができる。 1 ポリシアル酸構造の多様性: 前年度に引き続き動物起源α2→8-結合ポリシアル酸構造に著しい多様性があることを見出し、成果はJ.Biol.Chem.268,23675-23684(1993)に公表した。 2 ポリシアル酸のカルシウムイオン結合能の定量的評価とポリシアル酸の生理機能との関連性: 3種のα2→8-結合ポリシアル酸鎖、すなわちpoly(Neu5Ac)、poly(Neu5Gc)、およびpoly(KDN)を調製し、これらとCa^<2+>イオンとの結合を^<45>Ca^<2+>を用い透析平衡法によって結合定数と結合部位数を決定した。また、Ca^<2+>イオンとの結合に伴って、ポリシアル酸のコンフォメーション変化が生じることを確かめた。各種ポリシアル酸がCa^<2+>イオンに対して高い親和性があるという性質を定量的に初めて見積もれたことは、これらの糖鎖を備えた複合糖質の様々な生理機能の理解に極めて有用な知見となった〔Biochemistry 33,in Press(1994)〕。 3 抗α2→8オリゴ・ポリKDN単クローン抗体・各種ポリシアル酸構造に特異的な単クローン抗体の作製とイムノアッセイ法の確立: 前年度に続きKDN-糖鎖に特異的な単クローン抗体の作製研究の一環として(8KDNα2→)_nを抗原エピトープとする単クローン抗体(mAb.kdn8kdnと命名)の作成に成功した〔成果はHistochemistry発表予定〕。また、KDNポリシアル酸の微量検出法等については、Guide to Techniques in Glycobiology,a Volume of Methods in Enzymology(W.J.Lennarz & G.W.Hart,Eds.),230,460-484(1994)Academic Press,Inc.。ポリシアル酸構造の多様性が明らかになった結果、多様な構造を特異的に識別し得る抗体の作製は生体内でのこれらの発現を調べる上で貴重な手段となると考えられるので、開発研究に着手した。現在は、ポリシアル酸の抗原活性を増大させる為、種々のポリシアル酸を脂質と共役させた分子の調製に成功している段階である。 4 ウニ卵におけるポリシアル酸構造の検索と同定: ニューヨーク大学のW.J.Lennarz教授らとの共同研究としてウニ未受精卵およびウニ初期胚に発生段階に特異的に発現するポリシアル酸を見出した。現在までに、ウニ卵ゼリー層に局在が確認されたポリシアル酸鎖の構造解析に成功し、従来未知の新規なタイプのポリシアル酸構造であることが明らかとなった。ウニでポリシアル酸構造の存在が同定・構造解析されたのは初めてである〔公表準備中〕。発生過程の胚に発現されるポリシアル酸はゼリー局在のものとは全く異なり、それらについても現在研究を進めている。
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