研究課題/領域番号 |
04044060
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小山 昇 東京農工大学, 工学部, 教授 (40134845)
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研究分担者 |
HAMNETT Andr ニューキャッスル大学, 化学部, 教授
ANSON Fred C カリフォルニア工科大学, 化学部, 教授
立間 徹 東京農工大学, 工学部, 助手 (90242247)
直井 勝彦 東京農工大学, 工学部, 講師 (70192664)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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キーワード | 修飾電極 / 電気化学 / 水晶振動子 / 高分子錯体 / 導電性高分子 |
研究概要 |
1.オスミウムトリスビピリジン錯体を取り込んだナフィオン膜による電極表面修飾 米国カリフォルニア工科大学のAnson教授との共同研究において、電極をカチオン交換性のナフィオン膜で被覆し、二価のオスミウムトリスビピリジン錯体を飽和するまで取り込ませ、その電気化学的挙動を酢酸ナトリウム緩衝液中において解析した。まず、オスミウム錯体をナフィオン膜に取り込ませる過程において、膜の剛体性が高まることが水晶振動子インピーダンス法により明らかになった。これは、ナフィオンが持つスルホン酸基がオスミウム錯体を介して静電的に架橋するためであると考えられる。次に、膜に取り込まれたオスミウム錯体を電気化学的に酸化して三価にすると、膜内の電気的中性を保つために、取り込まれた錯体の1/3が再び放出されることが走査電気化学顕微鏡を用いた観測により明らかになった。またこのとき、膜が水を取り込んで一時的に膨潤することが水晶振動子インピーダンス法によりわかった。その後、ナフィオン膜内のオスミウム錯体の酸化還元を繰り返すと定常状態に達するが、このとき、酸化還元にともなう膜内の電荷量の変化を補償するため、ナトリウムイオンが膜に出入りすることがわかった。また、膜の酸化還元にともなって、ナフィオンが持つスルホン酸基の、オスミウム錯体を介する静電的架橋の状態が変化するために、膜の膨潤・収縮がわずかながらも起こることが確認され、マイクロアクチュエーターへの応用の可能性があることが示された。オスミウム錯体を飽和量の2/3だけナフィオン膜に取り込ませた場合には、酸化にともなう錯体の放出は観測されず、最初から定常状態と同様の酸化還元挙動を示した。 2.ポリアルキルビオロゲンとアニオン性両親媒性分子とのポリイオンコンプレックス膜による電極表面修飾 米国カリフォルニア工科大学のAnson教授との共同研究において、ポリブチレンビオロゲンとアニオン性両親媒性分子とのポリイオンコンプレックス膜により修飾した電極について、過塩素酸ナトリウムまたは過塩素酸リチウム水溶液中における電気化学的挙動の塩濃度依存性について検討した。その結果、特定の濃度を境に、ビオロゲンサイトの酸化還元にともないポリイオンコンプレックス膜を出入りするイオンの輸率や膜内の電荷伝達速度などが変化することが、サイクリックボルタンメトリー法および水晶振動子インピーダンス法により明らかになった。また、輸率等の変化する濃度では、膜の粘弾性的性質やビオロゲンサイト間の相互作用も大きく変化することが水晶振動子インピーダンス法や可視分光測定により示され、ポリイオンコンプレックスの相転移が起きていることが明らかにされた。 3.ポリピロール膜の軽水および重水中における電気化学的挙動 英国ニューキャッスル大学のHamnett教授との共同研究において、ピロールを重水または軽水中で電解酸化重合してポリピロール被覆電極を作製し、それらの重水中または軽水中における酸化還元反応およびそれに伴う膜/溶液界面における物質移動、膜の粘弾性および膜厚変化について水晶振動子インピーダンス法、赤外分光法、エリプソメトリーなどの方法を用いて解析した。その結果、軽水中においても重水中においても、ポリピロールの電解重合膜がある程度以上厚くなると、膜の粘弾性的性質が無視できなくなってくることがわかった。このとき重水中において、より粘性が高いことがわかった。また、ポリピロール膜を電気化学的に酸化・還元させた場合、膜の酸化にともなって膜の膨潤と質量の増加が観測された。このとき、膨潤度も質量増加も重水中においてより大きかった。これは、水素と重水素、軽水と重水との物性等の違いにより、ポリピロールのNサイト等と溶媒との相互作用が異なることや、そのためにポリピロールの高次構造、膜質等が異なるためであると推察される。
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