日本およびインドの中小企業の発展に関する比較研究:機械工業を中心に

1994 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 04044070
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 一橋大学
• 研究代表者: 尾高 煌之助 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90017658)
• 研究分担者: BHAVANI T.Ad Institute of Economic Growth, Lecture ; GOLDAR Bishw Institute of Economic Growth, Reader ; SIDDHARTHAN エヌ.エス. Institute of Economic Growth, Professor ; VERMA Prabha Institute of Economic Growth, Professor ; GUPTA Devend Institute of Economic Growth, Professor ; 服部 民夫 東京経済大学, 経営学部, 教授 (10238032) ; 井上 雅雄 立教大学, 経済学部, 教授 (20151623) ; 寺西 重郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70017664) ; 清川 雪彦 一橋大学, 経済研究所, 教授 (60017663) ; VERMA Prabhat chandra Professor, Institute of Economic Growth
• 研究期間 (年度): 1992 – 1994
• キーワード: インド / 中小企業 / 機械工業 / 生産管理 / 労務管理 / 技術移転 / 経済開発 / 日本

研究概要

概況
平成6年度に実施した研究は、以下のとおりである。
1.労務管理の実態、雇用管理や生産性測定等に関して、インドと日本とにおいてそれぞれ実地調査を実施したほか、前2年度の成果に鑑みて再吟味の必要な論点について吟味検討した。とりわけインドにおいては、同じ中小企業といっても「在来型」と「近代型」とが共存していることが判明したので、下請構造やマーケティング等についても、調査結果の再吟味が必要だった。
2.日印それぞれの研究者が相手国を訪問した機会を利用して研究小集会を開催し、実態調査結果を中間報告しあうとともに、当該研究計画の進行状況について情報を交換した(東京では、平成6年10月25日ヴァルマ氏報告、デリーでは、平成6年12月19日清川氏報告)。
3.研究成果のとりまとめを開始した。とりわけインド政府は、1991年以来の経済自由化への政策転換に伴い、中小機械工業のありように重大な関心を払っている折から、本研究の成果や戦後日本の産業政策の経験を整理して公開する意義は大きい。この目的のため、メンバー以外の中小企業問題の専門家ならびにインド経済の専門家をお迎えして、1996年2月に東京で小規模の研究集会を開催する計画である。研究集会の成果は学術誌上に公開するほか、可能ならば英文報告書を公刊したい。
研究所見概要
1.スズキおよびその関連部品供給企業のもつ生産管理技術は、マルチを通じて現代インド工業へ成功裡に移転してきた。部品供給ネットワークも、現地調達部品についてはうまく機能しており、部品メーカーも逞しく成長しつつある。
2.現地工場調査には、面接調査員の訓練に十分の時間をかける必要がある。費用はかさむが専門的心得のある人を使うほうが信頼度が高い。調査員の指揮・監督には専任者を充て、研究者はプロジェクトの運営に専念すべきである。
3.低開発諸国のより円滑な工業化のためには、農業セクターと非農セクターとの間のバランスにもっと配慮しなければならない。政府の徴税能力に限りがあるので、銀行預金に対する事実上の課税方式を編み出すなどの工夫が要せられる。
4.労働組合は、社会政治環境と無縁ではない。日印の社会変容を比較すれば、前者の労使関係は安定化と後退の、後者のそれは躍動化の変動の時代にある。
5.インド機械工業の下請制が抱える問題は、下請代金支払いの遅延である。これが小企業の回転資金不足を生み、生産能力の向上を妨げ、製品の質の改善が遅れる。この事態の改善とともに、品質向上運動の支援、大・中・小企業の密接な企業連携、小企業に対する公的資金補助や職業訓練などが考えられてよい。
6.現代のインド工業では、生産額、雇用、固定資本のいずれにおいても、小企業の比率は資本集約度の低い食品産業でとりわけ大きく、化学、金属加工、機械工業がこれに次ぐ。その販路は、伝統的な販売ルートに依存する場合が多い。
7.日本からインドへの技術移転はきわめて緩慢だった。その原因の一つは、為替管理を初めとする制度的理由のため、諸手続きに長時間を要したことである。この欠点は、1991年の自由化政策の樹立以来、大幅に改善されつつある。今後両国は、移転をめぐる市場取り引き固有の諸課題に取り組むことになろう。
8.小企業においても、資本と労働とはむしろ補完的で、代替的なのは、これら2要素と原材料との関係である。小企業に蔓延する低賃金は、労働市場分断のせいではなく労働の質が低いためである。生産要素代替の弾力性は産業ごとに異なるので、技術選択が生産物の選択と無関係ではない。

研究成果

• [文献書誌] 尾高煌之助: "インド(December 1992)実態調査メモ" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 清川 雪彦: "途上国における工場調査と非標本誤差の管理-インドと中国の事例から-" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 寺西 重郎: "Sectoral Resource Transfer,Conflict,and Macro-stability in Economic Development:A Comparative Analysis" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 井上 雅雄: "社会変容と労働組合(上)" 大原社会問題研究所雑誌 No.427(1994.6月号). 427. 1-18 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 井上 雅雄: "社会変容と労働組合(下)" 大原社会問題研究所雑誌 No.428(1994.7月号). 428. 21-45 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 服部 民夫: "インドへの技術移転-マルチ社の事例研究-" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Devendra B.Gupt_aand Bishwanath Goldar: "SUBCONTRACTING IN INDIAN INDUSTRY:A STUDY OF SMALL-LARGE INDUSTRY LINKAGES" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] P.C.Verma: "STRUCTURE AND GROWTH OF SAMLL SCALE INDUSTRIES IN INDIA" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] N.S.Siddharthan: "REALITY AND PROBLEMS OF JAPAN'S TECHNOLOGY TRANSFER TO INDIA" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Bishwanath Goldar: "MODERNISATION OF SMALL AND MEDIUM SCALE INDUSTRIES IN INDIA" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] T.A.Bhavani: "EMPLOYMENT GENERATION THROUGH SMALL SCALE ENTERPRISES:THE INDIAN EXPERIENCE" (未公刊).
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Odaka, Konosuke: ""A Memorandum on the field study on the primary-ancillary firm relationships in the Indian automobile industry, " in Japanese." (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kiyokawa, Yukihiko: ""How to control non-sample errors in factory surveys in developing countries, lessons drawn from field studies in India and China, " in Japanese." (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Teranishi, Juro: ""Sectoral Resource Transfer, Conflict, and Macro-stability in Economic Development : A Comparative Analysis"" (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Inoue, Masao: ""Social transformations and labor unions, " in Japanese" Journal of the Ohara Institute of Social Problems. Nos.427-428, June (pp.1-18) and July (pp.21-45). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Hattori, Tamio: ""Japanese technology transfer to India : a case study of the Maruti Corporation, " in Japanese." (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Gupta, Devendra B.and Bishwanath Goldar: ""Subcontracting in Indian Industry : A Study of Small-large Industry Linkages"" (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Verma, P.C.: ""Structure and Growth of Small Scale Industries in India"" (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Siddharthan, N.S.: ""Reality and Problems of Japan's Technology Transfer to India"" (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Goldar, Bishwanath: ""Modernization of Small and Medium Scale Industries in India"" (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Bhavani, T.A.: ""Employment Generation Through Small Scale Enterprises : The Indian Experience"" (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より