研究分担者 |
黄 祖瑚 南京医学院, 医学系, 講師
陳 錫慰 南京医学院, 医学系, 講師
賈 輔忠 南京医学院, 医学系, 教授
武田 清 山梨医科大学, 医学部, 助手 (90242635)
荘 和憲 山梨医科大学, 医学部, 助手 (90154682)
薬袋 勝 山梨県衛生公害研究所, 生物部, 部長
赤羽 賢浩 山梨医科大学, 医学部, 助教授 (60092855)
荒木 国興 国立公衆衛生院, 衛生微生物学部, 室長 (40107800)
真弓 忠 自治医科大学, 医学部, 教授 (00049016)
中島 康雄 山梨医科大学, 医学部, 教授 (20039845)
HUANG Zu-Hu NANJING MEDICAL COLLEGE
CHEN Xi-Wei NANJING MEDICAL COLLEGE
JIA Fu-Zhong NANJING MEDICAL COLLEGE
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研究概要 |
中国の日本住血吸虫症浸淫地域における肝炎ウイルスの保有状態を調査する目的で、1992年から1993年にかけて、南京医学院と共同研究を行った。日本住血吸虫症浸淫地域の疫学調査としては、南京市近郊(調査A)、四川省眉山県(調査B)、安徽省銅陵(調査C)の一般住民を対象に、日本住血吸虫症の浸淫状況とともに肝炎ウイルスの保有状態を検討した。対照として山梨県若草町の一般住民(調査D)及び肝疾患のため入院加療を行っている南京医学院の急性、慢性肝疾患患者(調査E)についても肝炎ウイルスマーカーの測定を行った。 これら調査地域のEIA法による日本住血吸虫虫卵抗原に対する抗体陽性者(抗体価200倍以上)は、調査(A)総数385名中76名(15.5%)、調査(B)325名中245名(75.4%)及び調査(C)300名中77名(25.6%)であった。この結果、調査(A)の日本住血吸虫症の浸淫状況は、同時期に行った山梨県の旧流行地(若草町)の228名中44名(14.9%)と同様な抗体保有状況を示しており、流行は既に終息したと考えられ、現地における疫学調査においても裏付けられた。調査(B)においては、抗体保有率が非常に高く、しかも急性期の感染者と考えられる虫卵陽性者が156名検出されたことから、本症の浸淫状況は非常に高いと判断された。またこの地域における現地調査では、肝脾腫をともなう腹水貯留患者も多く見られた。調査(C)は、現在本症の対策が地方政府により強力に採られている地域であり、浸淫状況は急激に低下し、調査(A)と調査(B)の中間と考えられた。 肝炎ウイルスの結果は、調査(A)では調査総数385名中68名(17.7%)にHBs抗原を検出した。そしてHBs抗体陽性は70(18.2%)、HBc抗体陽性は277(71.9%)であり、HBVの未感染者は89名(23.1%)にすぎなかった。HCV抗体はEIA法では1名も検出されなかった。調査(B)では対象325名中HBs抗原陽性は41名(12.6%)、HBs抗体陽性は94名(28.9)、HBc抗体陽性は142名(43.7%)で、HBVの未感染者は122名(37.5%)にすぎなかった。HCV抗体陽性者はみられなかった。調査(C)では、対象300名中HBs抗原陽性は29名(9.7%)、HBs抗体陽性は45名(15%)、HBc抗体陽性124名(41.3%)で、HBVの未感染者は149名(49.7%)であった。HCV抗体陽性者はみられなかった。以上中国の日本住血吸虫症の浸淫地域では一般住民1,010名中247名(24.5%)がHBV感染者であり、HBVに未感染のものは360名(35.6%)にすぎなかった。同地域の一般住民ではHCV感染は全くみられなかった。 一方、山梨県若草町の一般住民では、対象228名中HBs抗原陽性は1名(0.4%)、HBs抗体陽性は32名(14%),HBc抗体陽性は64名(28.1%)で、HBV未感染は154名(67.5%)であった。HCV抗体陽性も16名(7%)であった。 南京医学院の慢性肝疾患入院患者(慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌)147例でも123例(83.7%)がHBs抗原陽性であり、HCV抗体陽性は13例(8.8%)にすぎなかった。しかもHCV陽性者の13例中10例はHBVとHCVの二重感染であった。また急性肝炎63例ではHBs抗原陽性は13例(20.6%)、HCV抗体陽性は14例(22.2%)であり。慢性肝疾患とは相違して急性肝炎ではB型肝炎とC型肝炎は明確に区別された。 以上より、日本住血吸虫症の浸淫地域の一般住民でのHBVキャリアが24%に存在するが、HCVキャリアは皆無であった。慢性肝疾患による入院患者でも80%はB型肝炎であり、C型慢性肝炎の大部分はB型肝炎との重感染である。中国におけるウイルス肝炎はその大部分がB型肝炎であり、C型肝炎の病因的な役割は軽度であり、C型肝炎の感染経路として輸血やその他の医療行為に伴う感染が重要であり、医療現場での努力で我国に見られる様なC型肝炎の蔓延は十分防止し得ると考えられた。
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