偏極電子源の開発とZ^0エネルギー域の偏極実験

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04044076
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 梶川 良一 名古屋大学, 理学部, 教授 (40022537)
• 研究分担者: PRESCOTT C.Y スタンフォード線型加速器センター, 教授 ; LEITH D.W.G. スタンフォード線型加速器センター, 教授 ; BREIDENBACH エム.アイ. スタンフォード線型加速器センター, 教授 ; BALTAY C. エール大学, 物理学部, 教授 ; 川原 英明 スタンフォード線型加速器センター, 研究員 ; 増田 裕昭 スタンフォード線型加速器センター, 研究員 ; 高橋 徹 広島大学, 理学部・助手, 助手 (50253050) ; 杉山 晃 名古屋大学, 理学部, 助手 (80187674) ; 長嶺 忠 東北大学, 理学部, 助手 (30212111) ; 末包 文彦 東北大学, 理学部, 助手 (10196678) ; 吉岡 正和 高エネルギー物理学研究所, 助教授 (50107463) ; 中西 彊 名古屋大学, 理学部, 助教授 (40022735) ; 鈴木 史郎 名古屋大学, 理学部, 助教授 (50089851) ; 湯田 春雄 東北大学, 理学部, 教授 (90108457)
• キーワード: スタンフォード線型加速器センター(SLAC) / 電子・陽電子直線衝突型加速器(SLC) / SLAC大型汎用測定装置(SLD) / 偏極電子ビーム / Z^0生成断面積の左右非対称度 / 電弱相互作用 / Bメソンの物理

研究概要

スタンフォード線型加速器センター(SLAC)の電子・陽電子直線衝突型加速器(SLC)は、システム全般にわたるフィードバックの強化などにより、安定した衝突を長く保つことに成功し、またフラットビーム技術の成功で強度が著るしく向上(昨年の約5倍)した。これはSLD実験の本格的なデータ収集を可能にするとともに、将来のリニヤーコライダー技術に明るい展望を与えるものとなった。
衝突点に設置した大型汎用測定装置(SLD)により、1993年2月から衝突エネルギー92GeVでデータ収集実験を開始し、4月中旬には偏極ビームによる実験を開始した。新カソードによる偏極ビームの開発が成功し、偏極度が衝突点で65%に達し、8月末までにZ^0の崩壊を5.5万事象収集した。このデータによってZ^0の生成断面積の左右非対称度を決定し、
A_<LR>=0.1656±0.0073(統計的)±0.0032(系統的)
を得た。これはLEP実験の総合平均とほぼ同じ統計的精度をもっており、以後のデータ収集によって電弱相互作用の基本パラメーターであるsin^2θ_Wを究極の精度±0.0004で決定できる可能性を示した。3次元バ-テックス検出器は設計通り2.3ミクロンの位置分解能を達成しており、重いクォークの崩壊に関する結合定数や崩壊パラメーターを高い精度で決定できることを実験的にしめし、事象の収集が進めばBメソンの物理の研究が可能であることを示した。平成6年末には、衝突点の偏極度約70%でZ^0事象およそ17万個を収集する予定である。
一方、名古屋大学、高エネルギー物理学研究所、SLACが協力して実用偏極度85%以上の偏極電子源の開発研究が進んでいる。

研究成果

• [文献書誌] K.Abe,et al.: "Measurement of the charged multiplicity of Z^0→bb^^- events." SLAC-PUB-6372. 1-18 (1993)
• [文献書誌] H.Masuda,et al.: "A study of jet handedness at the Z^0 resonance." SLAC-PUB-6362 Submitted to Int.Europhysics Conf.on High Energy Physics,Marseille,France,Jul 22-28,1993.1-3 (1993)
• [文献書誌] Charles Y.Prescott,et al.: "e^+e^-Collisions at the SLC:the left-right asymmetry." SLAC-PUB-6355.Invited talk International Conference on Neutral Currents:Twenty Years Later,Paris,France,6-9 Jul 1993.1-12 (1993)
• [文献書誌] K.Abe,et al.: "A measurement of R_b=Γ(Z^0→bb^^-)/Γ(Z^0→hadrons)at SLD." SLAC-PUB-6292 Submitted to Int.Symp.on Lepton-Photon Interactions,Ithaca,NY,Aug10-15,1993.1-10 (1993)
• [文献書誌] Martin Breidenbach,et al.: "SLC and SLD:Experimental experience with a linear collider." SLAC-PUB-6313.Presented at 2nd International Workshop on Physics and Experiments with Linear e^+e^- Colliders,Waikoloa,HI,26-30 Apr 1993.1-18 (1993)
• [文献書誌] Marcello Piccolo,et al.: "SLD results from the study of polarized Z^0 produced at the SLC." SLAC-PUB-6285 Presented at Rencontres de la Valle d'Aoste,La Thuile,Italy,Mar 7-10,1993. 1-18 (1993)
• [文献書誌] K.Abe,et al.: "A measurement of α_S from jet rates at the Z^0 resonance." SLAC-PUB-6133 Phys.Rev.Lett.71. 2528-2532 (1993)
• [文献書誌] P.N.Burrows,et al.: "Studies of 〓CD B Physics and jet handedness at SLD." SLAC-PUB-6225 Presented at Rencontre de Moriond,〓CD and High-Energy Hadronic Interactions,Les Arcs,France,Mar 20-27,1993. 1-12 (1993)
• [文献書誌] R.D.Elia,et al.: "First measurement of the left-right asymmetry in Z boson production." SLAC-PUB-6169 Mod.Phys.Lett.A8. 2237-2248 (1993)