研究課題/領域番号 |
04044085
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上林 弥彦 京都大学, 工学部, 教授 (00026311)
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研究分担者 |
澤田 直 九州大学, 工学部, 助手 (70235464)
岩間 一雄 九州大学, 工学部, 教授 (50131272)
CHEN Qiming カリフォルニア大学, 計算機科学科, 客員教授
室賀 三郎 イリノイ大学, 計算機科学科, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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キーワード | 論理設計 / 計算機援用設計 / トランスダクション法 / 設計データベース / 相互運用性 / オブジェクト指向 |
研究概要 |
本年度は最終年度であるため、トランスダクション法の一般化と最新の論理回路であるFPGA(フィードプログラマブルゲートアレイ)設計への利用、およびCADデータベースのためのデータモデルの一般化とその試作を行った。また、トランスダクションプログラムを公開できるように準備をしている。CADデータベース上で、トランスダクション法で協調処理を行なう点に関しては、その基本的な部分が完成した。以下に本年度の成果についてまとめる。 (1)誤り補償型トランスダクション法のアルゴリズムの改良と応用 トランスダクション法は、基本的に与えられた回路を、必要とする性質を持つように変形してゆくもので、変形が不可能になった段階で回路設計が終了する。誤り補償型トランスダクション法は、回路の変形が不可能になった場合に強制的な変更を適用することにより、さらに変形および設計改良を行なうためのものである。回路変形の能力は高いが、計算時間がかかるという欠点がある。まず、誤り補償の方式を変えることにより、回路変換能力の異なるような誤り補償型トランスダクション法を開発した。次に、計算時間を減少させるために種々の工夫を行った。 (2)大規模回路設計への適用 前年度に引き続き、適用できる回路の大きさの上限をできる限り大きくする方法について検討した。回路の上限は、回路が実現する関数を表わすBDDの大きさで決まることになるため、BDDの大きさを動的に制御する方式を採用した。また、部分回路を選んでそれを設計目的に合う形に変形するという操作を繰り返すことにより、大規模回路の設計を行なう方式についても改良を加えた。この場合に問題となるのは部分回路の選択であり、選択方式をいくつか用意することにより、適用回路に適した方式を選ぶ方式を採用した。 (3)トランスダクション法を利用したFPGA設計 FPGAはプログラムを実行することによってハードウェア構成を変更できるような性質を持っており、最近非常に注目されている。このFPGAの設計は、論理ブロック間の配線と各ブロックの実現する論理の2つを決定することによって実現される。FPGAの設計プログラムを利用した場合に、冗長度があるため、トランスダクション法によってさらに設計改良できる。このためには、既存の論理ブロックの論理関数を変更して統合する方式や冗長結線を除去する方式等を開発し、その効果を調べた。 (4)データ知識統合モデルの実現 CADシステムのためには、分散したデータベースや知識ベースを統合利用する必要がある。このためには、現状のオブジェクト指向の枠組みでは不充分であるため、知識の階層、データの階層、およびその関連を表現する階層の3つに分けて実現する、新しいデータ知識統合モデルを提案していたが、それをオブジェクト指向モデルを利用して開発し、モデルの有用性を示した。 (5)代理オブジェクトモデルの提案と利用 CADデータベースでは、オブジェクトが多様な使われ方をするが、それを表現するために代理オブジェクトという概念を導入した。これにより、データの多様性のほかに利用者の役割りの多様性を表現できる。その結果として、CADデータベースを中心として利用者が協調作業をするようなシステムの基礎を作ることができた。 (6)ソフトウェア開発 トランスダクション法のプログラムは、C言語で開発され公開できるような形で準備中である。代理オブジェクトを利用したCADデータベースは、オブジェクト指向言語を利用して開発している。システムは、ローカルネットだけではなく広域ネットにも対応できるように考えられており、地域的に分散した人々の協調による設計を補助することができる。 トランスダクション法自体は研究代表者がかなり前に考えた方法であるが、論理関数をコンパクトに表現できるBDDの実用化によって、実用規模の回路が扱えるようになった。従ってより大規模な回路を扱うためには、BDDによる表現法の改良も重要である。トランスダクション法の持つ回路の再利用性はデータベースの特性に適合しているが、協調処理を考えたより高度な機能の実現が今後の問題である。
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