研究課題/領域番号 |
04044089
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 矩行 京都大学, 理学部, 助教授 (30025481)
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研究分担者 |
JEFFERY Will カリフォルニア大学, ボデガ海洋研究所, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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キーワード | 発生パターン / 卵細胞質因子 / 遺伝子発現 / 脊索細胞 / 色素細胞 / 筋肉細胞 / 原索動物 / 進化 |
研究概要 |
さまざまな新口動物群の18S rDNAの塩基配列を決定し、その比較にもとづいて原索動物の起源と進化を推論してみると、従来主張されてきた幼型成熟(ネオテニ-)よりも、尾をそなえたいわゆるオタマジャクシ幼生の発生が、脊索動物の起源と進化を考える上で重要な発生学的イベントであることが示唆された。本研究の目的はホヤの脊索細胞、色素細胞、筋肉細胞で特異的に発現する遺伝子の発現制御機構を、特に分化の決定に関与すると思われる卵細胞質因子に注目しつつ解析することであるが、上述の分子系統学の研究結果を考えると、本研究は個体発生のみならず系統発生を理解するためにも重要と思われる。なおこの2年間で色素細胞に関する研究は余り進展しなかったので、脊索細胞と筋肉細胞について述べる。 1.脊索細胞:ホヤのオタマジャクシ幼生の発生にともなって40個の脊索細胞が分化する。その全細胞系譜を私達はすでに明らかにしている。1990年にマウスのT(Brachyury)遺伝子が単離されたが、この遺伝子の発現は初め原条を含む広い中胚葉領域に出現し最後に脊索に残ることから、脊索の分化との関係が示唆されていた。私達はホヤのT遺伝子ホモローグを単離した。この遺伝子の発現は64細胞期に始まり、嚢胚期でピークをむかえその後減少するというもので、しかも発現は予定脊索細胞に限定され、さらに予定脊索細胞の発生運命が脊索に限定されるとすぐに発現するというものであった。このことは、原索動物ホヤの脊索と脊椎動物の脊索が相同であることを示す、初めての分子的証拠である。T遺伝子は脊索の構造遺伝子ではなく、分化制御遺伝子であることからもこの遺伝子の今後の研究は重要であろう。 2.筋肉細胞:この点については、卵細胞質因子(分化決定因子)、分化調節遺伝子、構造遺伝子の三つのレベルから研究をすすめた。 (1)分化決定因子.ユウレイボヤ末受精卵を軽く遠心すると4つの卵片に分離すること、その中の一つ黒卵片に筋分化決定因子が分配されること、この筋分化決定因子はuv照射によりその活性を失うこと、さらに、黒卵片中のポリ(A)^tRNAがその失活を部分的にレスキューできることなどがわかった。現在、黒卵片のcDNAライブラリーを作り、その中から決定因子活性をもつcDNAクローンの単離を進めている。 (2)筋分化調節遺伝子.ホヤのMyoDホモローグ(AMD1)を単離した。その発現を調べてみると64細胞期から始まることがわかった。これは筋肉アクチン遺伝子の発現より2・3時間早く、マウスなどの脊椎動物と同様にホヤでもAMD1が筋分化調節遺伝子として働いている可能性が高い。 (3)筋構造遺伝子.筋肉アクチン遺伝子を単離した。この遺伝子の発現は嚢胚期から筋肉細胞に限っておこる。その5'上流域にリポーター遺伝子(大腸菌のlacZ)をつないだ隔合遺伝子を作成しマボヤ受精卵に導入すると、lac-Zの発現は筋肉細胞にのみ現われた。5'上流域のいろいろな長さの隔合遺伝子を作ってその発現を調べた結果、転写開始点から100bp上流のわずかな領域でこの遺伝子の発現が制御されていることがわかった。 3.無尾幼生を生じるホヤでの解析:モルグラ科のホヤの中に尾をもたない幼生(無尾幼生)を発生させる種がいる。この無尾幼生を生じるホヤの卵とは、尾(筋肉や脊索)を作る因子が欠如していると考えられるので、尾をもつ幼生(有尾幼生)の卵との比較により、尾をつくるための因子を検索したいと考えた。両者のそれぞれのcDNAライブラリーを作りサブトラクションすることによって、有尾幼生を生じるホヤの卵にのみ存在するcDNAクローンを3つ単離した。そのうちの一つには転写制御因子としてのタンパク質がコードされていることがわかった。現在この遺伝子の機能を解析している。 また、無尾幼生を生じるホヤのアクチン遺伝子を解析したところ、偽遺伝子が何個か存在することがわかった。このことは、使われなくなった遺伝子が長い間に異常(機能を失ったもの)になった可能性を示唆する。
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