研究課題
1.ヒトとモルモットにおける高温による脳発生異常の臨界期の同定:胎生期に高温ストレスに暴露されると種々の中枢神経系奇形が誘発される。モルモットにおける奇形発生の臨界期は、神経管奇形については妊娠23-25日、小頭症については同49-56日であることが実験的に明らかになった。京都大学医学部附属先天異常標本解析センターに所蔵される奇形胎児を調べたところ、神経管奇形を有する16例の胎児について、その母親が娠妊4週に発熱等による高温を経験していたことが明らかになった。これは発生学的にモルモット娠妊23-25日の時期に相当し、高温に対する感受期が両種の間でほぼ一致することが明らかになった。2.高温による脳発生異常の比較胎生病理学的研究:妊娠中に高温に暴露されたヒトとモルモットの胎児の脳を組織学的に検索し、両者を比較した。神経管閉鎖不全の症例においては、神経細胞の壊死や増殖異常、脳におけるロゼット形成などが観察され、これらの病理的変化は、ヒトとモルモットの間で酷似していた。また、モルモットにおける小頭症の臨界期に相当する胎齢8〜9週のヒト胎児の脳を組織学的に調べたところ、丁度この時期に神経芽細胞からニューロンが分化し、大脳皮質の原基が形成されていることがわかった。以上の結果から、ヒトの脳発生異常の成立機序を研究する上で、モルモットがすぐれた実験モデルになることが明らかになった。本年度は、共同研究者のSmith博士とWalsh博士が京都大学へ滞在し上記の比較研究を行った。更に、高温による異常発生メカニズムの解明を解明するため、胚培養、熱ショック蛋白に関する分子生物学的研究やinsituhybridizationなどの方法を用いた共同研究を現在継続中である。
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