研究課題
1.正常トランスサイレチン(TTR)を完全に欠損し、家族性アミロイドポリニューロパチーの原因となるヒト異型TTRのみを産生するマウス株を確立した。これらマウスでは、月齢11ヵ月頃から6匹中、4匹に食道、大腿骨を中心にアミロイドが沈着し始めていた。一方、正常TTRとヒト異型TTRとを産生する同月齢の対照マウスでは、6匹中、1匹で食道にのみ、アミロイドが沈着していた。ヒト異型TTRのみを産出するマウス血中では、ヒト異型TTRからなるホモテトラマ-のみが存在し、対照マウスでは、マウス正常TTRとヒト異型TTRとからなるヘテロテトラマ-が形成される。上記の結果は、異型TTRのみからなるホモテトラマ-が主にアミロイドを形成して沈着することを示唆すると考えられる。また、TTRを完全に欠損したマウスでは、血中のレチノール結合タンパク質及び甲状腺ホルモン(T4)のレベルが、それぞれ、正常マウスの3%及び3.5%に低下しているが、これらヒト異型TTRのみを産生するマウス血中においては、レチノール結合タンパク質が正常値の8.4%に、T4が5.6%に増加していることを見い出した。2.胚性幹(ES)細胞の由来した129/Sv/Evマウスの遺伝子ライブラリーより単離した血清アミロイドP成分(sap)遺伝子領域を用いて、sap遺伝子への挿入変異導入用のベクターを作製し、ES細胞に導入した。こうして得たG418及びGANCに耐性の約120個の細胞の各々からDNAを抽出して調べたが、未だ目的とする挿入変異株の単離はできていない。3.ttr遺伝子への挿入変異導入用ベクターを用いて、効率良く変異を導入するためのベクター構造を検討した。この結果、チミジンキナーゼ遺伝子の下流に存在するDNA断片が長いほど、positive negative selection法でのGANCによる濃縮効果が高まること、GANC耐性の非相同組換え株ではベクターDNAが末端から欠失した構造であることを見い出した。
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