研究概要 |
1.海底地盤の液状化と高密度化に関する研究 ゆるく堆積した海底地盤は波によって液状化し,その後,高密度化へと進行する。本研究では,液状化過程には2段階の過程があることを明らかにした。すなわち,第1段階として,平均間隙水圧の上昇を伴なう地震時と同様な液状化過程があり,第2段階として,平均間隙水圧の上昇は伴なわず,変動水圧によって繰り返へし周期的に発生する液状化過程があることが示された。さらに,このような液状化に伴なう砂層の高密度化過程を,各種の変動水圧に対する間隙率の時間的・場所的変化として実験的に把握した。このデータは,今後液状化過程の理論解析をすすめるうえで貴重な資料となるものである。 2.波による海底地盤の液状化現象の相似律に関する研究 波による海底地盤の液状化現象を通常の波動水槽を用いた模型実験によって再現することは困難とされてきた。本研究によって,空気含有量と透水係数の比の縮尺をある程度以上大きくすることにより,近似的に相似な模型の作製が可能であることが示された。また,従来より進めてきた実験的研究の設定条件が実現象とかけ離れたものではないことが明らかとなった。さらに,重力の加速度を変えうる模型では,現地地盤をそのまま実験に使用でき,現象の再理性もよいことが明らかにされた。本研究結果は今後のこの方面の実験的研究をすすめるうえでの基礎を明らかにしたものである。 3.水中地盤内の空気量測定に関する研究 音響伝播計測による水中地盤内の空気量測定に関する実験ならびにその解析を行なった。実験結果の解析にあたっては,音波の伝播速度から空気量を求める方法に加えて,音響の減衰特性に着目し,固有減衰から空気量を求めることを試みた。しかしながら,両者とも,空気量が0〜0.1%の範囲において急激に変化し,空気量がそれ以上となるとほぼ一定値をとる特性を有していることが判明し,本研究で対象としている0.1〜1.0%程度の空気量を測定することが,この方法ではきわめて困難であることが明らかとなった。このことは,音響計測法による空気量測定法を確立するうえで重要な課題を提供したといえる。 4.液状化現象と構造物の安定性に関する研究 海岸構造物の周辺地盤が液状化し流動することにより,構造物が不安定化し,破壊につながることが多い。このような現象の代表的な例として,護岸裏込め土砂の流出現象および海岸ブロックの沈下現象を取りあげ,変動水圧条件,地盤条件および構造物条件による地盤の液状化ならびに流動の特性を実験的に把握した。また,構造物周辺地盤の流動防止法について検討し,地盤の締固めと同時に,構造物自体を透水型構造にすることがきわめて有効であることが示された。 5.大型波動水槽による海岸堤防周辺地盤の液状化実験 水深5m,水路幅2mの2次元波動水槽を用い,本研究で得た相似律にもとづき,実物の1/7模型を想定し,波高0.8m,周期約3.5秒の波を発生させ,海岸堤防周辺地盤の間隙水圧および地盤変形量の測定を行なった。その結果,従来より行なってきた1次元変動水圧実験でみられたのと同様に,地盤の液状化および構造物周辺地盤の移動が観察され,2次元波動のもとにおいても1次元の場合と同様な現象が発生することが確かめられ,現地におけるこの種の現象の実現性が裏付けられた。 6.現地における海底地盤の液状化解析 1992年に鳥取県弓ヶ浜海岸で発生した大規模海岸侵食の原因究明調査をすすめ,波による海底地盤の液状化との関連性について解析的な検討を行なった。現地調査結果より,代表波として波高6m,周期8秒,波長80mの波を選び,それの海底地盤に及ぼす影響を1次元および2次元解析によって検討した。その結果,海底地盤は浅い場所では約3mの深さまで液状化することが示され,海底地盤の液状化現象が大規模海岸侵食を発生させる主要な原因となりうることが明らかにされた。
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